(06-8)
深夜三時。
項垂れている与晴に声を掛けた女性がいた。
「与晴くん? 貴方こんな時間までここに居たの!?」
つばさの母の恭子だ。急いで立ち上がると、彼女は走り寄ってきた。
「お母様、こんばんは……」
その後に早歩きで現れた男性に見覚えがあった。
与晴は姿勢を正すと彼に敬礼した。男性も敬礼で返す。
「君が佐藤君か?」
「はい。佐門署刑事課三宅班、佐藤与晴です。岩井先輩にお世話になっております」
与晴がつばさの父、岩井警視正を仕事中に遠目で見たことは何度もあった。
しかし、面と向かって言葉を交わしたのはこれが初めてだった。
「いつも娘が世話になっている。今日はありがとう。もう真夜中だ。明日の仕事に差し支える。帰りなさい」
「そうして。大丈夫。娘にはわたしたちが付き添うから」
二人の気遣いは嬉しかったが、与晴は丁重に断ると、尋ねた。
「……明日は非番です。……また大変お恥ずかしながら、このような精神状態では、家で寝ることもままなりません。居させてもらえませんか?」
「……わかった。しかし、君は張り込み業務後だと聞いている。
すぐに仮眠を取りなさい。動きがあればすぐに知らせるから」
「……はい。ありがとうございます」
政志と恭子はナースセンターへ、与晴は仮眠が出来そうな場所を探した。




