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オレの一念、岩をも通す!?  作者: 喜世
第八章

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(04-8)

 翌日夕方。

うわの空で事務仕事をしていたつばさの元に与晴がやってきた。


 彼の目は揶揄う気など起きないほど爛々としていた。

終えたばかりで気が立っているのだろう。


「仇、取りました……」


 つばさはなにも言わず、彼を椅子に座らせて暖かいコーヒーを渡した。

 少しするとようやく人心地着いたらしい。

 口頭で報告をもらった。


 秋山は、

・岩井家に対する住居侵入、器物損壊

・関口に対する、監禁、殺人、死体遺棄

・岩井つばさに対する、誘拐、暴行、殺人未遂

で起訴されることに決まった。


 資金の出所はITOU、秋山を唆したのは社長令嬢の伊東唯梅。

ITOUの悪事を追い詰めるのが今後の三宅班の仕事になる。


「よくやった。お疲れ様」


 部下の仕事を直に見たかった。成長を感じたかった。

後で取調べの録画を見せてはもらえるが、生で直に見る機会を逃したのは自分だ。


 まだ険しい顔をしている彼をつばさは屋上へ連れて行った。

岩井つばさとして彼と話したかった。そして彼へのご褒美としてやりたいことがあった。

 誰にも邪魔されないよう、扉に鍵をかけるとベンチに彼を座らせ向き合った。


「お疲れ様。ありがとう。わたしの仇とってくれて」


 険しい顔がようやく緩んだ。


「ありがとね。こんなダメダメな先輩に見捨てずについて来てくれて、

いっぱい助けてくれて。与がわたしのペアでいてくれてほんとよかった」


 彼は顔を伏せなにも言わない。


「……大丈夫? 疲れたよね」


「……すみません。後で録画見て、ダメ出しお願いします」


 どこまでも真面目だ。クソがつくくらいの。


「……うん、わかった。明日ね」


「お願いします」




 咳払いと深呼吸してつばさは男のフリ、佐藤晴樹のフリをした。

見た目以外、似ているのかどうかはわからなかったが。


「与晴、兄ちゃんと今から写真撮ろう」


 与晴へのご褒美だ。彼が今一番喜ぶだろうもの。


「……え?」


「この前約束したろ?」


「いいんですか!?」


 一気に明るい表情になった与晴。

 そのつもりで、今日は彼のお兄さんのスーツを着てきていた。


「もちろん」


「ありがとうございます!」


 与晴にネクタイを結び直され、髪を直されるところから始まり、

シングルショットをねだられた上にポージングを要求されたが、

つばさは全部答えた。


 そしてツーショット。

タイマー撮影をしようと操作している彼からスマホを奪った。


「自撮りでいいよ」


 与晴の肩を抱き、一枚撮った。


「もぅ。カメラちゃんと見ろよー」


 与晴が驚いた顔でつばさを見ている変な写真が撮れていた。


「兄ちゃん、俺がやる」


 スマホを取られたつばさは彼に任せた。


「あー。兄ちゃん目瞑った。やり直し!」

「あ。かっこいい!」

「兄ちゃん、変顔しよ!」


 タメ口で笑ってはしゃぐ彼を見て、

やっと本当の意味で与晴の兄代わりになれた気がしていた。

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