(03-6)
明日と明後日は休み。
つばさは与晴と約束通り飲むつもりだった。
「じゃあ、着替えて上で集合でいいですか?」
共有スペースで将棋をやりながらでもいいが、今日はゆっくり二人で目を見て話したい。
「今日は部屋で飲も。与の部屋行って良い?」
招くと絶対に断られるのは分かりきっている。さらっとさそうが押しかけるつもりだ。
「分かりました。七時に来てください。部屋、片付けますから」
珍しく拒まれず拍子抜けした。
「ありがとう。じゃあまた後で」
「はい。では」
「お邪魔しまーす」
時間通り彼の部屋へ。
「どうぞ」
「今日はすんなり入れてくれますねー、与晴くん」
ちょっと茶化したが、真面目に返された。
「小野先輩と飲むの、最後かもですから」
つばさは確信した。やっぱり彼の元気のなさは“兄”との別れの辛さから来ているに違いない。
「じゃあ、今日は朝まで飲もっか」
「日付変わる前に解散です」
「クソ真面目が……」
お馴染みのやり取りをしつつ、酒盛りの準備。
「本ありがと、全部読み終わったからお返しするね」
協力するドラマの原作本を与晴から借りて入院中に読み切った。
「早っ。感想聞かせてくださいよ」
「えっとね……」
話しながら、買ってきたものを温めたり、部屋から持ってきたものを皿に装ったりしながら、彼に感想を話した。
「まずは、事件解決、お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした!」
強盗傷害事件の犯人を逮捕で無事終わった。
「そして、退院おめでとうございます!」
「……めでたいかな? まあ、ありがとう!」
ビールを飲み干した。
「あー。おいしい!」
「最高ですね!」
枝豆を食べながら与晴は突然言った。
「その服、岩井先輩のですよね?」
彼の指摘通り、上下共に元の自分の物だ。
「ジャージはちょっとサイズ合わないけど、Tシャツは大丈夫でしょ」
「デザインと色が全然大丈夫じゃないです」
「部屋着にデザイン関係ないでしょ」
ファッションに基本無頓着なつばさと、どこまでもこだわる与晴の会話は噛み合わない。
「もう先輩の夏服、全部俺が選んでいいですか?」
「どうぞどうぞ。……てか毎回あなたが選んでるでしょ?」
「まぁ、そうですね。……先輩に任せると素材が台無しになるんで」
「それって、褒めてるの? ディスってるの?」
「褒めてるじゃないですか。素材が良くないといくら服が良くてもダメですから」
「そう?」
彼が億せずハッキリものを言うのが嬉しいつばさは思った。
これなら話してくれるかもしれない。今の彼の気持ちを。




