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オレの一念、岩をも通す!?  作者: 喜世
第七章

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(01-4)

「えっ!? 歌舞伎ですか? これから!?」


 軽いランチをLOTUSの面々としながら今日のこれからの予定を改めて聞いたつばさは驚いた。

 歌舞伎俳優の山村永之助とは、顔合わせを兼ねた会食だけのつもりだったが……


「本業を知って欲しいとの事で、夜の部最初の一幕だけですが席を融通してくれました。

いかがです?」


 つばさは与晴と顔を見合わせた。


「……断るのは失礼だよね」


「……ですよね。お互い職業理解は必要ですし」


 誘いを承諾し、電車で劇場へ向かった。




 観劇自体の経験が無いに等しいつばさは、率直に不安と心配を隣に座る菊池に伝えた。


 基本的な観劇マナーを教えてもらった後、今から観る演目について聞いた。


京鹿子娘道成寺きょうがのこむすめどうじょうじ


 まったくピンと来なかった。菊池もスマホで調べながらの説明。


所作事(しょさごと)。要は舞踊…… ダンスって言えばいいかな?」


「ダンス……?」


 もっと分からなくなった。菊池は助けを求めた。


「蓮見さん。ヘルプ!」


 空いた隣の席へ彼がやってきた。


「どうしたの?」


「道成寺の説明お願い!」


 半分仕事ではないからか、彼にタメ口の菊池。


「えー。俺もよくは理解出来てないもんな……

音声ガイドに頼ろうよ」


 のんびりとした口調以上に、その発言内容につばさは驚いたが推し隠した。


「……そういう物があるんですね」


 日本語なのに解説が要る。何度も観てるだろう人間がよく分からないと言う。

 かなり不安になってきた。眠気に襲われ寝てしまったらどうしよう。

 それは失礼極まりない。


 しかし彼は安心させるように話を続けた。


「言葉や意味が分からなくても、綺麗とかカッコイイって眺めてるだけでもいいんですよ。私もほぼそれですから」


「……そうなんですね」


「今日の演目、永之助は女形です」


 この前貸してもらったパンフレットにあったのは黒紋付の化粧無しの姿。女形はまったく想像が出来ない。

 蓮見社長は少し考えた後、つばさが驚くことを口にした。


「お着物お好きですよね?」


 菊池の持っていた結婚式参列の写真で判断したのだろうか?


「……はい」


「着物が何回も変わります。

華やかで色も柄も綺麗な物ばかりなので、是非それに注目してみてください」


 不安が突然楽しみに変わった。

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