(01-5)
「お梅はお嬢だから茶華道部かな?」
「それはちょっと偏見じゃないですか?」
「そう? でもすごいよね、正座で大人しくやる道。わたしには無理」
お嬢様な祖母に仕込まれ掛けたが、どうにも嫌で逃げた過去があった。
「俺もですね…… てかなんでさっきから『お梅』呼びなんです?」
相棒にツッコミを入れられたつばさは理由を話し始めた。
「わたしさ、高校の時につるんでた友達が菊池と露木だったんだ」
何を話し出すのかと思った与晴だったが、黙って聞く。
「そのせいで付けられたあだ名が『お岩』『お菊』『お露』
いまだにそれでお互い呼んでるせいか、何となく……」
「……なんだか背筋が冷たくなって来た」
「……あ、わかる?」
「……幽霊?」
「そう。恨めしや~」
与晴は笑った。
相棒のウケを取れたのはいい。
しかし、今の太い声でやってもちっとも怖くないということがわかった上に、
どう足掻いても元の自分の声は出せないのだと、
喉仏に触れて虚しくなったつばさは直ぐにやめた。
まだ笑っている相棒につばさは何気なく聞いた。
「怪談や幽霊、怖くない人?」
「そういえばそうですね。家族の幽霊になら、逢ってみたいですし」
笑顔で言った与晴。
それがつばさにはかなり堪えた。
自分が祖父母の霊に会いたいと言うのとは全く重みが違う。
「……ごめん」
「えっ? ……あ。すみません」
互いになんだか気まずくなり、押し黙ってしまった。




