(05-5)
「こんばんは」
つばさが声を掛けると、女の子は顔をあげた。
涙の跡が見える。明らかに怯えている。
彼女の目線に合わせるため、つばさは腰を屈めた。
茂山に言われた通り、声のトーンを上げ笑顔を作る。
「もう夕方だけど、お家に帰らなくて大丈夫?」
女の子の表情が強張り、また俯いた。
聞き方が不味かったのか、声と表情が不味かったのか、つばさは怯んだが、
気を取り直し、さらに穏やかに話した。
「お姉…… お兄さんたちはね、お巡りさん。なにか困ってたら話してくれるかな?」
真新しい警察手帳をそっと見せると、女の子はそれをじっと見たあと、ポツリと口に出した。
「……なくしちゃったの」
「……なに無くしちゃったの?」
「おうちのカギと、スマホ、なくしちゃったの……」
家に入れず、家族に連絡もできずに歩いていた、といったところだろう。
手ぶらなところを見ると、ランドセルか鞄ごと無くしたようだ。
置き忘れか、盗難か……
「大変だったね。どこで無くしたかわかる?」
女の子は首を振った。
「そっか。じゃあ、ちょっとだけお兄さんたちと一緒にいようか」
女の子はこくりとうなづいた。
与晴はいつの間に車から出したのか、手際よくカイロとブランケットを彼女に与え、彼女の名前と年齢を確認した。
彼に女の子を任せ、つばさは警察無線で連絡を入れた。
「寒かったでしょう? お腹空いてない? 大丈夫?」
与晴が女の子を気遣うと、小さな声で恥ずかしそうに返ってきた。
「……おなかへった」
与晴はあたりを見渡すと、すぐ横に自動販売機を見つけた。
「おしること、コーンスープどっちがいい?」
「コーンスープ」
「了解」
与晴は自販機でリクエスト通りのものを買うと、彼女に渡した。
「……ありがとう」
女の子はゆっくりと美味しそうにそれを飲んだ。
連絡を終えたつばさが戻って来た。
与晴の耳元で業務連絡。
「……捜索願いが出てた。すぐに両親連れてくるって」
「了解です。良かった……」
つばさは女の子の前でしゃがみ込んだ。
「美味しかった? 暖まった?」
「うん!」
だいぶ元気になった女の子に微笑みかけ、頭をポンポンとした。
「よかった。お父さんとお母さんすぐに来るって。もう少し待っててね」
「うん!」




