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オレの一念、岩をも通す!?  作者: 喜世
第三章

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(05-5)

「こんばんは」


 つばさが声を掛けると、女の子は顔をあげた。

 涙の跡が見える。明らかに怯えている。


 彼女の目線に合わせるため、つばさは腰を屈めた。

 茂山に言われた通り、声のトーンを上げ笑顔を作る。


「もう夕方だけど、お家に帰らなくて大丈夫?」


 女の子の表情が強張り、また俯いた。

 聞き方が不味かったのか、声と表情が不味かったのか、つばさは怯んだが、

 気を取り直し、さらに穏やかに話した。


「お姉…… お兄さんたちはね、お巡りさん。なにか困ってたら話してくれるかな?」


 真新しい警察手帳をそっと見せると、女の子はそれをじっと見たあと、ポツリと口に出した。


「……なくしちゃったの」


「……なに無くしちゃったの?」


「おうちのカギと、スマホ、なくしちゃったの……」


 家に入れず、家族に連絡もできずに歩いていた、といったところだろう。

手ぶらなところを見ると、ランドセルか鞄ごと無くしたようだ。

 置き忘れか、盗難か……


「大変だったね。どこで無くしたかわかる?」


 女の子は首を振った。


「そっか。じゃあ、ちょっとだけお兄さんたちと一緒にいようか」


 女の子はこくりとうなづいた。

 与晴はいつの間に車から出したのか、手際よくカイロとブランケットを彼女に与え、彼女の名前と年齢を確認した。

 彼に女の子を任せ、つばさは警察無線で連絡を入れた。




「寒かったでしょう? お腹空いてない? 大丈夫?」


 与晴が女の子を気遣うと、小さな声で恥ずかしそうに返ってきた。


「……おなかへった」


 与晴はあたりを見渡すと、すぐ横に自動販売機を見つけた。


「おしること、コーンスープどっちがいい?」


「コーンスープ」


「了解」


 与晴は自販機でリクエスト通りのものを買うと、彼女に渡した。


「……ありがとう」


 女の子はゆっくりと美味しそうにそれを飲んだ。

 連絡を終えたつばさが戻って来た。

 与晴の耳元で業務連絡。


「……捜索願いが出てた。すぐに両親連れてくるって」


「了解です。良かった……」


 つばさは女の子の前でしゃがみ込んだ。


「美味しかった? 暖まった?」


「うん!」


 だいぶ元気になった女の子に微笑みかけ、頭をポンポンとした。


「よかった。お父さんとお母さんすぐに来るって。もう少し待っててね」


「うん!」

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