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とある領主の備忘録  作者: G1fter
7/12

年385 5/4

ドラン・シュタート。彼らの起源はカラディアからはるか遠い地、「龍の住む島」にある。


本物の龍が住む、或いはかつて住んでいたと言われる地であり、多くの奇妙な生物が住む広大な大地だったという。


しかしその真偽は不明であり、カラディアの民達は彼らの言う「龍」とは信仰の対象、言わば神を偶像化したものであり、実在しないものであると考える者がほとんどだ。


事実、シュタートの民達は龍神教の信者であり、彼らが龍と共にいたという報告はあれど証明できる証拠もなく、かの国もそのことについて明かしていない。


彼らがこの地に上陸したのは20年前のことだ。龍神教の将軍であり、後の皇帝ライル2世に率いられた圧倒的な数の艦隊によって瞬く間に現地の都市を植民地とし、次々と領内に要塞や砦を築いた。


彼らの軍は歩兵、槍兵、重騎兵からなる。非常に強力な軍であり、特に最上位重騎兵の重騎士と貴族騎士はカラディア随一の騎士達である。


4の街、8の城、20の村を支配下に治めたシュタートは、現在北方で最大の国家に成長した。国境付近では常に兵士が巡回しており、龍神教の司祭達が信仰を広めるためカラディア中で教えを説いている。


順調に勢力を伸ばしているように見えるが、この大陸において障害無く物事が進む、ということはあり得ない。


領内ではクォリール海賊に加え、シュタートへの復讐に燃える先住民族、狼神を信仰する狂った騎士団達が暴れまわっており、“大陸で一番の危険地帯”と呼ばれている。


かつてカラディアの先住民の中で最も強力な部族だったアトゥツ民はシュタートはもとより、カラディアへ上陸する全異邦人に対し敵意を向けている。


彼らを服従させようと初めにエルフが、その後ドラン・シュタートが侵攻し、現在スカイフル山脈まで押し戻されたアトゥツ民は、しばしば部隊を編成し、シュタートの隊商やパトロールを攻撃しており、諸侯の軍勢すら襲撃することもある。


狼神騎士団は数年前に設立された。騎士団と名乗ってはいるが、実際は荒くれ者の集まりであり、その目的は武力によって周りの土地を支配するというものである。


そんな自己中心的な目的で集まった彼らだが、近年では規模も大きくなり、非常に強力な集団となった。


最上級騎士は圧倒的な力と素早さを持ち、シュタートの騎士達でさえ彼らに敵わないことは幾多の戦闘で証明されている。


たとえ10名程度の小隊でも訓練された正規軍に深刻な被害を与えることができる為、商人や旅人はもちろん、諸侯でさえ彼らを避けることが多い。


ドラン・シュタートを巡る道中、幾度か彼らを見かけたが何とも異様な連中であった。


何匹もの狼たちを従え、支離滅裂なことを叫びながら進軍していた。人間を優に超える巨体の狼に騎乗している者もいた。


あんな連中に襲われたらひとたまりもないだろう。考えるだけで恐ろしい。


さらに加えて、ドラン・シュタートには王位を狙う者がいる。龍神教の大司祭にして皇帝ライル2世の実弟、ウルトラスク大司教だ。


彼はライル2世がカラディアに来た目的を忘れ、自らのために侵略を続けていると主張している。本来の目的は故国のために植民地を得ることであり、毎月献上金も納めなければならない。


しかしライル2世は故国では一介の将軍であるにも関わらず皇帝を自称し、献上金も納めておらず、この行動は故国への反逆であるとウルトラスク大司教は考えている。


彼は龍神教の教えを広める傍ら、協力者を探している。兄に代わり、自身が本来の目的を果たすために―。


クォリール海賊や狼神騎士団を避けつつ、ドラン・シュタート領内を巡ってきたが今のところ順調に進んでいる。


各所で仕事をこなしつつ、兵を募り40名程まで部隊が大きくなった。一人ひとり確実に実力をつけているし、以前のような失敗をする心配も少しづつなくなってきている。


とはいえ油断をしてはいけない。狼神騎士団のような連中にも負けないような部隊になって初めて安心できるだろう。


そういえば先ほど酒場で近々トーナメントが開催される、という話を耳にした。


場所はザッド巨人族の支配する街ザッド。ここからほど近い場所だ。次はそこに向かうことにしよう。

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