プロローグ4
最近駅前にできたカフェにテストが終わったら行くという、約束は果たしたのだろうか。
中学最後のバレー部の試合はどうなったのだろう。
強くないとはいえ、一回戦ぐらいなら勝てたんでは無いだろうか。
私はふざけて笑う友人の顔を思い出す。
さまざまな記憶と思いが交差する。
私は俯いていた顔を上げた。
「…記憶って、例え死んでても取り戻せますかね?」
「「さぁ?」」
二人の声が重なった。
完全に他人事の言い方に悲しくなった。
一方で、あっけらかんとした言い方は今の状況が『死』だったとしても、悪いものではないと感じさせるた。
私は自然と笑いながら情けない声を出す。
「少しは希望を持たせてくださいよぉ」
「あはは、わるいわるい
でも、少し吹っ切れたか?」
ケースケが笑った。
友達とくだらない話をして笑い合っているような感覚に囚われる。
ここが死後の世界だろうと、夢の世界だろうと、自分ではどうしようもない。
なら笑って過ごした方がいいに決まっている。
「記憶取り戻したいのか?」
ショウは顎に手を当てて口元を綻ばせる。それは大人びた笑顔で、ちょっとだけ私の胸は高鳴った。
不安はある。
死の記憶なんてきっと辛くて苦しいに決まっている。
それでも友達との記憶。高校生になれた記憶。
それらがない方が悲しいし悔しいし寂しい。
私は力強く頷いた。
ケースケが元気付けるように背中をバシッと叩く。
「それじゃ、一緒に記憶探そうぜ!
えっと…」
「キヨミ
私はキヨミって言います」
そこで私は初めて二人に名乗ったのだった。
これでプロローグは終わりとなります。