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第7話

                    *



 肉だけでは足りず、遠火で温めたバターロールを由実と美名美で食べ、きちんと消火してから部室に戻った。


 由実が美名美の勉強を見たり、月面観測同好会の2人とやんややんや言いながら一緒に大富豪したりなどしている内に、時刻は10時半を回っていた。


 火星を見るから、と言って出て行った2人を見送った後、第一部室棟裏口横に1つだけあるシャワールームで、美名美がひとっ風呂浴びて帰ってくると、


「それ何です? 由実先輩」

「寝袋の下に敷くものだ。これがあると無いとでは、とんでもなく寝心地が違うのだよ」

「へえ、そんなのあるんですね」


 カウチの手前で由実が、エアータイプの寝袋マットを電動ポンプで膨らませていた。


「って、もう寝るんですか?」

「うむ。私はロングスリーパーでね。ああ、明かりは消さなくても構わないよ。寝付きはかなり良い方ではあるし、アイマスクをするから気遣いは無用だ」


 完全に膨らんだところに、マミータイプの寝袋を敷いた由実は、ではお休み、と言ってモソモソ入りアイマスクを着けようとする。


「由実先輩。どうせ私も暇ですから寝ますよ」

「ん。そうかね」


 美名美はそう言って携帯をジャージズボンのポケットにしまうと、由実から貰った色違いの物を座面に敷いた。


 電気を消し、携帯のライトを使ってカウチに戻ってきた美名美は、携帯をポケットから出して頭元に置いてから寝袋に入った。


「……しかし、私と言えども、良い意味でも悪い意味でも、人であるならば変わるものなのだね。

 私はね、赤の他人と新たな関係を築く、という行為を嫌っていたはずであるのに、美名美くんに対しては積極的に関係性を深めていきたい、と感じているのだよ」

「あれ? 由実先輩は、西宮原先輩達とは仲が良かったんですよね?」

「ああ。連中とはそういう過程を物心つく前に済ませているのでね」

「なるほど」


 そこからしばらく、差し込んでくる月の光によって、青白くほのかに照らされた部室に無言の時間が続いた後、


「……連中は私などと違って志が高く、天をく太陽の様に輝いている。私はただ……、月の裏で……、薪を燃やしている事しかできぬのだ……」


 身体を左にいる美名美から逸らすように横向きになった由実は、遠い星を見る自由浮遊惑星の様に寂しげな声でそう独りごち、すぐに寝息を立て始めた。


 表情を見ようと、こっそり顔を彼女に向けていた美名美だが、その顔は壁を向いていたためそれは出来なかった。


 ――昔なんか、嫌な思いでもしたのかな……?


 常に泰然と一歩退いている様な様子の由実にしては、先程のどこか繊細な空気感の発言は珍しく、美名美にはそれが気になった。


 しかし、起こして訊くわけにもいかず、彼女はひとまず保留にしておく事にした。

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