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第29話

「それはそれとして。センセイ氏、椎茸しいたけは全部あげるよ」

「ハカセ殿は椎茸が苦手だったな。頂こう」

「あっ、じゃあ私にも分けてください」

「いいよー」


 椎茸をこそぎ落とす金属板の位置をネジで細かく調整しつつ、雅はそう答えて機械の下部にティッシュケースの様に収納された、食品梱包(こんぽう)用のビニール袋の箱を開封した。


「この機能が1番便利じゃないのかね」

「うん。ボクもそう思うよ」


 得意げにそう言った雅がスイッチを入れると、原木がゆっくりと回り始めた。


 実験結果は、とりあえず収穫は出来たが、椎茸の軸がズタボロになりやすい欠点を露呈してしまった。


「ありゃあ」

「まあ、自家消費なら問題なかろう。どうせ軸は食わぬのだ」

「うー、それはそうか」


 でも改良の余地があるなあ、と言って、いつも通り自分の部室へ行こうとした雅だが、封鎖中であることを思い出して、仕方なくベンチに戻った美名美の隣に腰掛けた。


「美名美嬢、おやついるかい?」

「市販品ですよね?」

「ご覧の通り」

「じゃあ下さい」

「信用ないなあ……」


 雅が背負っていた四角い革製リュックの中から出した、駄菓子の袋入りラムネをしっかり確認してから美名美は受け取った。


「普段の行いが悪すぎるのだよ」

「反論のしようがないね」


 肩をすくめた雅は3袋まとめて口に放り込み、ラップトップを出して膝の上で作業を始めた。


「なにしてるんです?」

「気になる? プログラミングの練習さ」


 美名美は横から画面を覗いてみるが、文字の羅列以上の事は理解出来なかった。


「こんなので出来るんですね」

「ふふふ。見た目は安っぽいけど、実はパーツから組み上げた特注品でね」

「話長くなりそうなんでそのくらいでいいです」

「了解」


 えっちらおっちら耕す由実を見ていて、1ミリも興味がなさそうな美名美の言葉に、雅はそう言って話を即座に切り上げた。


「ところで由実先輩。なんで急に農業を?」

「特に深い意味はないな。単にやりたくなったからだ」

「なるほど」


 そう答えたところで、ちょうど畑の手前の端まで着いたため、由実は奥の方へと移動して再び耕しながら手前に移動し始める。


 由実が気まぐれに何かをする事は過去にもあったが、肉体労働的な事は美名美は覚えが無かった。


「で、あの苗って何の苗なんです?」

「根菜類だな。だいたい半分の20が大根で、人参が10、蕪が10といったところだ。若干小さいとは感じるだろうが、根を切るとよろしくないのでアレで問題は無いぞ」

「結構色々育てるんですね」

「うむ。やはり何かと使い道があるのでな」

「趣味と実益って感じですね」

「左様」

「手伝いますよ」

「いやいや、止めておきたまえ。手に山ほど血マメが出来てしまうぞ」

「マメでもそんなに出来ないと思いますけど……」


 冷静に突っ込みを入れた美名美だが、自分でやりたいんだろう、と察して立ち上がるのを止めた。


「耕運機とかないんですか雅先輩」

「そんな気の利いたものは生憎あいにくないねぇ。あそこに肥料撒き機はあるんだけど」


 先ほど椎茸収穫機が入っていた物置の横にある、ほとんど白線引き機そのままのそれを雅は指さす。


「なんであんなものがあるのか、と思っていたがそういうことか」

「まあ肥料撒く以外はできないんだけどさ。耕運機機能も付けたかったね」

「珍しい事もあるものだ、どうせなら合体させてしまうのが貴殿であろうに」

「どうしても原付のエンジンが手に入らなくてねえ」

「作ろうとはしたんですか……」

「当然さ。一緒に出来たら便利そうだからね」

「とはいえ、仮にあっても危なくて使えないが」

「ですね。ガソリンで爆発されたら笑えませんし」

「まーたそうやって爆発前提で話すー」


 正直、技術力の関係で出来ないとは思うけれどね、と雅は、痛恨の極み、といった様子でそう言った。


「まあ農機を自作する意味は流石にないとは思うが」

「そう思って、小型の耕運機と連動させるアタッチメント式を開発中でね」

「ほう」

「まあ、まだ設計図レベルだけれど」

「乞うご期待、と言ったところか」

「そうそう」


 凄まじい早さで打鍵しながら会話する様子に、美名美は目を丸くしながら雅を見る。

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