恐ろしい夢を見た [エッセイ版]
今日見た夢です。
万が一、忘れない内に。
朝方まで仕事をしていた。
少し腰が痛くなってきたので、ちょっと休もうかと二時間ほど仮眠を取ろうと横になった。
最近は夢等も滅多に見る事も無くなっており、起きてからの仕事のことが気に掛かっていて、いつ寝たのかもわからなかった。
何かの物音がした。
音がした部屋の入り口を見ると、戸の影の暗闇に何か蠢くものがチラチラと見える。
俺はひどく驚愕して、狼狽えた。もしかして、奴らが来たのかと思った。(奴らってなんだ?)と一瞬思ったが、次の瞬間には奴らの事を理解していた。
奴らとは、所謂Gの事だ。だがその大きさは尋常ではなく、カブトガニ位はある。そして人を襲う。人以外も襲う。食えるものは何でも食う。集団で襲ってくる。見た目が気持ち悪い。恐ろしい。すごく恐ろしい。
都会の方で発生が確認され大騒ぎとなっていたが、こんな田舎にまで来ることは無いと高をくくっていた。
(不思議にこれらの事を大真面目に信じていた。これが夢の中だからというものだろうか)
俺はびくびくしながら、如何すれば良いのかと右往左往していた。しかし、こうしていても仕方ないと思い、家にいただろう家族を呼ぶ為に大声で叫んだ。
だが返事は無かった。もしかしてすでに襲われたのかと思ったが、今は自分の事を気にするべきだと考えて取りあえず棚上げした。
ふと気づくと、部屋の外の不穏な気配は無くなっていた。
恐る恐る入り口に近づくと、そっと外を覗いた。しかし、そこには何もいなかった。だが、何か嫌な気配が薄っすらと感じられた。
意を決して部屋の外に出てみた。何もいない。物音ひとつしない。静かだ。台所に向かってみた。
一見して変なところは見つからない。
そこから居間の方を伺ってみた。居間の奥につながっている戸が開けっ放しになっており、そこから見える玄関も同じく開けっ放しだった。
俺は家族に置いてかれたのかと愕然とした。だがまあ仕方ないかと(何故か)諦め、この後どうするかとしばらく呆然としていた。
すると、居間の庭とつながる窓にライトの明かりが差し込み人影が現れた。家族が返ってきたのかと思いそちらを見ていると、その人影はずかずかと家に入り込んできた。家族に文句の一つでも言おうと意気込んだが、そこに現れたのは見知らぬ若い男だった。(現実でも見た覚えは多分無い。一体誰だ?)
家族だと思っていたので吃驚したが、相手も同じく吃驚していた。しばらく二人で見詰めあい静止していたが、何方ともなく動き出し、相手は何か言い訳をしていたが俺の頭にはその言葉は入って来なかった。
そうこうしている内に、なぜか一緒に逃げようという話になり、家に残っている物資を二人で漁る事になった。
彼は手ぶらだったが、いつの間にか籠のような物を持ちポイポイと物を投げ入れていた。(俺はこの段階では籠のような物の正体は認識していない。ここ重要)
大き目の缶詰を見つけて持ち上げてみると、やけに軽かった。振ってみると中身がこぼれた。
こぼれた物が足に掛かったかとそちらを見ると、蠢く物が有った。
奴らだった。
俺はパニックになり大騒ぎして逃げ惑った。だが奴らはこぼれた物に夢中で別段、後を追いかけてくる事もなかったので直ぐに落ち着くことができた。
気が付くと、彼の姿が無かった。置いて行かれまいと後を追うが何処にも居ない。彼が入って来た窓のところに行くとポツンと大き目のゴミ箱が置いてあった。
家の台所に置いてあった物だ。其処で漸く彼が物を入れていた籠がそれだったと理解した。
ゴミ箱に被せてあったビニール袋ごと、中に入れた物を引き抜いて持って行ったようだ。
外に飛び出して辺りを見回してみたが、もう誰も居なかった。俺は置いて行かれた。
暫くそこで呆然と突っ立っていた。
俺はこの世界に絶望を感じた。
と、いうところで目が覚めた。
目が覚めて暫くは、身動ぎも出来ず、そしてひどい不安感に襲われた。夢と現実の区別がつかなくなり、まだ夢から覚めていないのではないかとも思った。五分か十分かして、漸く体を起こす事が出来た。
この夢は今まで体験した中で、一番インパクトのある夢だった。何故なら、ここに書いてある様に詳細を憶えている事でも明らかだ。何故憶えていられるのか?現実に有ったからではないのか?恐ろしい妄想が膨らんでいく。
ここで気になった事がある。
ゴミ箱の件で、始めに彼がそれを使っている時にはゴミ箱だと認識していなかったのに、後にゴミ箱が出て来て初めて整合性が取れた。いくら夢だからと言って、こんなご都合主義が起こるのか?結果から遡って途中の話が出来上がっていくのか?出来上がった話を台本通りに演じる役者のように、自分は役割を演じていただけなのか?夢とはこんな物なのか?それとも、夢と現実には大きな差等、無い物なのか?
現実だと思っていた今迄が、何だかひどく曖昧になった様な気がして恐ろしくなってきた。




