表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

01

四年前から執筆していた内容のものをようやく日の目にあてることができました。

拙い上、超特急で展開していきますがお付き合いいただければと思います。

地球の皆様及び異世界の皆様、おはようございます。


六百年前の某聖女です。


地球と言う世界から聖女になるため異世界に強制連行された私は、小国出身の勇者と共に魔王を倒した後、魔力を使い過ぎて長い間眠りについていたらしい。


らしい(・・・)と言うのは期間の話であって、眠りについたのは覚えている。


事実、私が深い眠りについたのは自らそれを望んだからだ。


魔力の枯渇は理由の一つであって、本当の目的は「誰にも起こされずゆっくり寝てみたい」という希望を叶えてもらったに過ぎない。

無理矢理に異世界へ呼び出され、地球に戻る術はなく、危険な任務を遂行せよと言われた上で「魔王を倒したあかつきには、何でも願いを叶えよう」と言われていたのでそう答えた。

地球(元の場所)に帰してくれ」と願えば、かるぅいノリで「ごっめーん☆ それは無理なんだ☆」と言われた時には殺意を覚えた。

実際、国の王様がそんな軽いノリで言うはずもないが、いかんせん、情緒と精神を共に不安定とさせていたため、幻覚と幻聴と被害妄想ががっつり入り混じって私にはそう聞こえた。


当時の王様は冨や名誉より睡眠を欲した私に気前よくそれを許してくれた(と思っている)のだが、私に惚れていたらしい勇者が許してはくれず「結婚するって言ったじゃないか!」と叫ばれたので丁重に「無理」とお断りしたところ、愛が憎しみに変化したらしく「寝ている間にあーんなことやこーんなことをしてやる!」と脅してきたので、触れられないよう透明な結晶の中に閉じこもらせて頂いた。


ざまぁみろである。


寝ていたから知らなかったけれど、残された文献には「聖女が眠りにつき、勇者は泣き崩れて、悲しみのあまり正気を失い、聖女を閉じ込めた結晶に恨み辛みを刻み残した」って書いてあった。

自分が目覚めた時には布団替わりの結晶なんて破片も残ってなかったので「なんて書いてあったの?」って、私を起こした神官に聞いたら、顔を真っ青にしながら震える声で「ち、“ちっぱい”と記述がございました」と教えてくれた。


すっごい笑顔になるよね。こういう時って。


もちろん、悪い意味で。


さっさと勇者本人――は無理だから、末裔連れて来いと満面の笑顔で言い捨てたので、たぶんそろそろ末裔(生贄)が差し出される頃だと思ってる。


信頼してますよ、神官様。仕事が早い人って嫌いじゃないよ。


で。


目覚めた現代の異世界は、進化を期待していた私にはガッカリで、六百年前とさほど変わらない中世ヨーロッパ風文明のまま。

鉄道ぐらい走らせろって思ったのは悪くない。

地球だって六百年もあれば産業革命くらいは起こってるのに、こいつらの力量はハナクソかと罵りたい。

神官に「鼻をほじるのはおやめください」と涙目で言われたので、とりあえず彼の服で指先を拭いておいた。


大丈夫、固形物はついてなかった。透明な液体。健康って素晴らしい。


話を聞き進めていると、結晶に閉じ込められたまま眠り続けていた私にあやかって、今でも百年に一度は聖女を異世界から呼んでいるという。


いい迷惑。


無責任に呼び出しておいて、眠っている事をいいことに私に責任転嫁しないでほしい。


私が勇者と共に魔王倒して以来、驚異的な魔王のような存在なんて現れないし、魔物もそれなりに鳴りを潜めているらしい。あくまで鳴りを潜めているだけであって、魔物が全く存在しないわけではない。

それにプラスして、昔から研究されてきた魔物の生態について少しずつ明らかになってきた事があるという。


異世界のどこにでも突如として現れる「(だく)」という、黒紫のモヤッとした雲のようなゴミみたいなもの。

その集合体が魔物になるという研究結果が発表されたことにより、「濁」を浄化する必要が出てきたのだという。


確かにそれは私が聖女をしていた頃には発表されていなかった内容だ。


ただし、旅の途中でそのモヤッとしたものは見かけた事があったので、道すがら浄化した事はある。


だって、なんかうにょうにょ動いて気持ち悪かったし。


研究者の子孫らしい人がドヤ顔で教えてくれた事に対して、「ああ、アレ名前付いたんだ」って返答したらめっちゃショックな顔された。


え? 何? 何か悪い事言った?


後で聞いたら、その研究のおかげで爵位を賜ったらしい研究者。それが一族の誇りだったらしい子孫を大層傷つけたらしい。


うわっ、知らねぇえええぇ。


まぁ、結局のところ「濁」を浄化するのは聖女の力のみであり、普通の魔法使いには無理という結果にまで至った事を聞いて「ええっ! すっごおおい! 聖女びっくりしちゃったぁ!!」と大げさに驚いてあげたら、子孫は大喜びだった。


太鼓持ち聖女と呼ばないで。


何気にぶりっ子したの、自分で堪えてるんだから。


あとコイツちょろすぎやしないか?


そういうわけでそこそこ平和な異世界ながらも、聖女が呼ばれ続けているのは、「濁」清掃活動ならびに平和維持活動という伝統文化になっていた。


たぶん、ベ●マーク集めた方がよほど効率的だったと思うよ。平和な気分になるし。うん。

異世界にもそういう制度導入検討したらいいと思う。


過去に呼び出された聖女の中には、私が魔王を倒した輝かしい戦歴を残したせいで異世界なんかに来る羽目になったんだと、眠りについていた私を殴りに来て、結晶に阻まれ拳を骨折した人も過去にいたという。


教会の厳戒態勢を突破し、世界で最も尊い場所と認定されていた私の元までたどり着いた聖女様は、聖女と名乗らず「ある意味勇者」として名を馳せたらしいが。

教会屈指の騎士達をポイポイと投げ飛ばす聖女を、誰も聖女と呼べないとのことで。


ルメニクス王国「聖女の記録」より抜粋。六百年前と国名が変わってるのは気にしない方向で行くとする。


記録読んでて思ったけれど、屈強な騎士達をポイポイ投げ飛ばすたぁ――あれ? もしかして霊長類最強の方?


ごふん、ごふんっ。


まぁ、なんつーか。正直すまんかった。


聖女を呼び出す伝統文化の起源が自分だと思えば確かに申し訳なく思う。


私が謝るのは筋違いな気もするけれど、世界を平和にしただけでは異世界の連中が満足しなかったのは結構酷い話だ。

強欲にもほどがある。聖女の力が必要だからって聖女を呼び続けるよりか、魔法使いが聖女の力を使えるようになる研究をした方が断然お得なのに、なぜその考え方に至らなかったのか、とポツリ零せば、研究者の子孫が目からウロコな顔をしてた。


流石にお前は気付けよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ