第9話
メグ・チャリーの家系は代々魔法使いだ。
両親は共に名だたる魔法使いであり、多くの弟子を抱えている。
メグも幼少から両親の元で魔法を学んでいた。
血筋ということもあり、メグは子供の頃から魔法の才能を発揮していた。
メグは軍学校の専門学科で魔法具士を選んだ。
メグの家系を知ってる教官は、メグが魔法学を選ぶと思っていた。
メグ程の人材ならきっと将来魔法研究者となると思っていたからだ。
メグの選んだ魔法具士とは、スクロールや魔法武器といった魔力を操れない者でも使える魔法の道具を作る者である。
魔法。
それは異界大戦時、天使族と人間族が同盟を結んでから天使族により伝えられた技術である。
魔力を持たない人間は、魔法石と呼ばれる魔力を伴った石を持つことで魔法を使えるようになった。
この魔法石は、元々人間界にはなかった物だ。
魔力がひしめき合う場所でないと存在しないからだ。
しかし、異界大戦が人間界で開始され、天使族と魔族による魔力のぶつかり合いが元で人間界に魔力が散布された。
そして100年続いた異界大戦であるが、勃発してから約30年で魔法石が生まれた。
魔法石にも大差があり、高給な物だと宝石と変わらぬ価値を持つようになった。
しかし、魔法石を持っていれば誰でも魔法が使える訳ではなかった。
魔法を理解し、魔力の流れを読む等といった修行をこなし、やっと低級魔法が扱えるくらいだ。
魔法にはレベル1〜レベル10と10のランクに別れ人間族が現時点で到達できた最高ランクは6であった。
メグは子供の頃から魔力の流れを読み取ることが得意であり、応用を効かせることで次々と魔法を理解していった。
小等部に入るころには、レベル1の魔法はだいたいこなせた。
高等部の頃にはレベル3の魔法を使える程であった。
レベル3というと、軍の魔術隊で小隊長を務めるくらいの実力である。
軍学校卒業時に魔法学を学んでいた者でさえレベル2になれるかどうかだ。
既にレベル3であるメグには軍学校で魔法学を選ぶ意味がない。
それに比べ魔法具を作ることは、特にレベル3以上の魔法を封じたスクロール等はほとんどない。
そのレベルに耐えうる素材が人間界に存在しないからだ。
通常のスクロールはレベル2が限度である。
いや、レベル3以上も出来ることは出来るが、長い期間を費やし、ゆっくりと魔力を封印しないとならないのだ。
メグは、レベル3以上の魔法具を通常の速さで生産する研究をしたいのだ。
スクロールや魔法武器は、地上軍でかなり使用されるが、空軍でもドラゴンライダーが使用する。
戦闘飛竜は主にワイバーンが選ばれている。
竜の中では小型であり、機動性に非常に優れており、また飼育すればよく懐くので軍で採用されたのだ。
しかし、ワイバーンは火竜や氷竜の様にブレスを
吐くことができないのだ。
そのため、ワイバーンの飛竜戦闘方法はドラゴンライダーがスクロールを使うことが主流なのだ。
メグは別に戦闘のために強力な魔法具を作りたい訳ではない。
ただ、自分の魔法は現時点で不可能と言われていることに対し、どこまで可能にすることが出来るのか。
ただ単にメグ自身を高めるには進化の見られない魔法具士に挑戦することがタメになると判断したのだ。