第7話
トマースとアルフは希望通り飛竜管制を専門学科として受講するようになった。
午後の授業開始。
トマース、アルフそしてミカは同じ列の席で講義を受けている。
なんとミカまでもが、飛竜管制を専門学科として選んでいた。
選んだ理由が(トマースが受けるなら、ニャーもこれをやるニャ)だそうだ。
軍学校入学理由も、こんな感じだったし、たまには自分でしっかり考えろよと伝えたこともあるが、(ニャーはしっかり考えてるニャ! 考えた結果みんなと一緒がいいニャ!)だと。
うん、なかなか可愛い奴だ。
しかし、飛竜管制というのは物凄い勉強料になる。
実技訓練はまだまだ先で、しばらくは座学ばかりだ。
昼食後ということもあり、隣のニャンコは大アクビをして教官に絞られている。
また、飛竜管制というのは驚いたことに旧世界の遺産であった。
オーパーツというと、高度な技術で作られた物を想像してしまうが、この様に知識として旧世界から受け継がれている事もオーパーツというのだ。
では、旧世界の飛竜管制とはどんなものだったのか。
これも座学「管制の歴史」で習ったのだが、旧世界の管制対象は竜ではなかった。
なんと、金属の塊を浮かせ、それを自在に動かしており、その金属の塊に対し管制を行っていたのだ。
その金属の塊は、今の飛行竜の様に運搬や旅客船としたり、また戦闘にも使っていたのだという。
旧世界人の文明は本当にこんなことが出来たのかと思わせる事柄が沢山あった。
では、この管制という技術がどうして今日まで受け継がれてきたのかというと、異界大戦までさかのぼってしまう。
異界大戦とは、天使族と魔族の戦争であったはずなのに、何故か人間界が戦場にされてしまい、人間族は自分達自身を、そして自分達の世界を守るため、その高度な文明による戦闘兵器によって対抗した。
天使族と魔族は、彼らの住む世界から異界である人間界へゲートと呼ばれる魔法により空間転移してきた。
その際に、天使界と魔界に住む亜人種がゲートに巻き込まれ、または自らゲートに入り込んだ。
これらの亜人種が、人間界を新転地として乗っ取るため人間族に戦争をしかけた。
天使族、魔族、亜人種そして人間族が入り乱れて戦争したことを異界大戦と命名したのだ。
天使族、魔族そして亜人種を相手に、いくら高度な文明を持った人間族でも徐々に太刀打ちできなくり、100年続いた異界大戦で人間族はその数を3分の1までに減らしてしまい、高度な文明も失われてしまったのだ。
異界大戦は、人間族、天使族そして魔族から1名づつ、今で言う3英雄と呼ばれる者達の活躍によら終結した。
異界大戦の後半、天使族と人間族は同盟を組んだ。
その際に、人間族が金属の塊を自由に飛ばし、それらを決められた場所からの出発と到着、そして味方と敵の場所が分かる投影機により、味方に敵の情報を伝え上手く誘導し撃破していく様が天使族の技術者に気に入られた。
これが旧世界の管制という技術であったが、異界大戦終盤には空飛ぶ金属も破壊つくされ、管制技術も人間族から失われてしまった。
しかし長命である天使族により、その当時人間族から管制技術を授かった技術者が空飛ぶ金属の代わりに竜を使い管制を行うことを思い付き、そして竜に合わせる形で管制技術を進化させ、今の飛竜管制というのが出来たのだ。
「どうだ、凄い歴史だろ?」
トマースは夕食の席で、違う専門学科を選んでるサクラとメグにその日の授業で学んだことを語る。
専門学科が始まってからというもの、トマースは毎度夕食の席で語ることが多くなった。
「ハイハイ、トマース先生の授業はわかりやすくて尊敬しちゃうわね」
たいして興味なさげにサクラがつぶやく。
「なっ、先生って、そんな、凄かことじゃないとですよ」
相変わらず照れると変な口調になる。
「サクラさんの言う先生とは、いわゆる大先生と揶揄する様なものなのです」
「トマース、すごいにゃん! 大先生だって」
「うん、ミキも揶揄という意味をよく調べてみよ〜う」
相変わらず賑やかな5人である。