第4話
「あざと過ぎるのです」
食堂にて昼食後のコーヒー(メグだけはオレンジジュースだ)を飲みながら雑談に興じる。
どうやらメグはアルフの可愛らしい自己紹介が気に入らなかったらしい。
「確かにね〜。あれはドン引きだよ〜」
「「「「自分で言うのかよ!」」」」
「サクラの髪の毛って〜、綺麗な色だよね〜」
皆から一斉にツッコまれても素知らぬ顔で話題を切り替える。
「この髪の毛ってお母さん譲りなの。アタシは人族と鬼族のハーフだから」
「それにしては、鬼族の特徴である角がないのです?」
この世界では、人間界に亜人は普通に暮らしており、人と亜人が結婚することは普通のことであるため人と亜人のハーフと言われても驚く者はいない。
「サクラは珍しい例なんだよ。普通は人と亜人の間に生まれた子供って亜人になるんだけどね」
「でも、オーガ特有のカラフルな髪の毛と、純血には劣るけど剛力も受け継いでるわ!」
「サクラのお母さんはオーガなのニャ。凄く強いのニャ」
ミキが自分のことの様に語る。
鬼族にも種類がある。
メジャーなのはゴブリンやオーク。
オーガは鬼族の中でも最強に分類されており、また数が少ないため希少種である。
「でも〜、オーガって自分より強い者を崇拝する傾向があるって、何かの本に書かれてたような〜。何故サクラのお母さんはサクラのお父さんに嫁いだの?」
「自分より強い者に崇拝するってのは、昔の話ね。今でもそういう傾向が少しはあるかもしれないけど。あぁ、正にお母さんがそうね。お父さんと戦って負けたからお父さんに嫁いだと聞いたわ」
「純血のオーガに勝てる人なんているのですか⁉」
「サクラのお父さんは強いのニャ。道場をやってるニャ!」
ミキが自分のことの様に語る。
「サクラのお父さんは武闘家なんだよ。コーマキ区で道場を営んでる。マヒロ・オスカーといえばけっこう有名だよ」
「知ってるのです!アルトリア戦術競技会の格闘部門でいつもオスカー道場に所属する人が優勝してるのです」
「サクラも去年までは未成年の部で三連覇してたけどね」
「サクラも強いニャ。地元でサクラ・オスカーと聞けばヤンキーどもはビビってたニャ」
「ヤンキーかよ」
「そういえは、ミキさんはファミリーネームは何というのですか?自己紹介の時に教えてもらってないので」
「ミキはミキなんだニャ」
「メグ〜。純血の亜人はファミリーネームを持ってないんだよ〜。貴族とかになるとファミリーネーム付ける場合もあるみたいだけどね〜」
「そうでしたか、それは失礼したのです。私の地元では獣人の方もファミリーネームを持っていたので・・・」
基本的には亜人はファミリーネームを持たない。
人間界に住み着くより以前からファミリーネームという概念がなく、人族と関わりあうようになってからも純血の亜人にはファミリーネームをつける習慣がない。
しかし、貴族になった亜人や会社等を経営する亜人はファミリーネームを付ける場合が多い。
メグの地元の獣人のほとんどがファミリーネームを持っているということは、かなりの都会なのだろう。
「さて、昼食も済んだし購買部へ行きましょうか」
本日の午後はフリーであるため、新入生のほとんどは昼食後に購買部へ行き、実家から持ちきれなかった生活用品を購入する。
サクラ達一行も同じ目的で購買部へ行き、そこでのあまりの商品の種類の多さに驚き、休日になっても外出する必要なくね?・・・と思うのだった。