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ドラゴンライダーと管制官  作者: 新堀はさむ
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第1話

「ドラゴ01 アルトリア管制塔 風向50度 風速レベル3 離陸を許可します」


「了解 ドラゴ01 出る」


管制官の離陸許可を受け、ドラゴンライダーは自分が騎乗する飛竜、ワイバーンの手綱を操り離陸疾走を開始する。

ワイバーンは滑走路中央付近まで全速力で駆けると己の翼をはためかせ上昇する。

本日もアルトリア空軍基地においては、様々な種の飛行竜が飛び交っていた。




アルトリア国立軍学校、今年も新入生を向かえる時期が来た。新西暦300年という区切りの良い年でもあり、今年になってもう4ヶ月目に入るというのになにかにつけ祝い事が乱発する。もちろん入学式等といった行事にさえ派手に行われる傾向がある。しかしそれはあくまで民間において。軍という規律の厳しい世界にあっては民間とおなじように浮かれることは出来ない。それは、まだ入軍する前の軍学校においても同じだ。入学式はたんたんと行われ、寮制度であるため入学式終了後は新入生は各自指定された部屋へと向かうのだった。


必要最低限の生活用品と衣服を詰め込んだトランクケースを引き、トマース・バーンは自分の与えられた部屋に向かっていた。黒髪黒い瞳、旧世界において東洋人と呼ばれた種族に似た外見である。もしくは本物の東洋人の血を受け継いているのかもしれないが、旧世界の記録は異界大戦開始から終結まででかなり失われてしまったのでそもそも東洋人という種族がどのような外見であったのかも詳しくは伝えられてない。父はトマースと同じく黒髪黒い瞳であるが、母の髪はプラチナブロンドで青い瞳だ。どちらかといえば母に似たかったとトマースは思っていた。さてやっと到着した部屋は、広い正方形を思わせ、ベッドが4つと各ベッドの脇にロッカーとデスクが備え付けられている。4人部屋ということもあり、1人辺りのスペースを考えるとやや狭いか。どうやらルームメイトはまだ到着していない。入り口から見て左手奥のロッカーにトマースの名前が貼られていたのでこの一画がトマースの場所になるのだろう。トマースは自分のベッドに荷物を起き自分もベッドに腰を下ろした。

「やばい、緊張する」

実家を離れて生活をするのは初めてだし、高等部までつるんでた幼馴染や友人達もトマースと共に軍学校に入学した。しかし、違う棟になってしまったので知り合いなんていない状態だ。アルトリア王国では、6歳になると義務教育が始まる。小等部3年、中等部3年、高等部3年の9年間を各区にある学校に通い15歳の成人を向かえて卒業する。小等部から高等部まで同じ建物で教育を受けるため、その学区の同学年の生徒たちはほぼ家族のような付き合いになってしまう。まあ、9年間一緒の学校に通うからそうなるな。義務教育が終わると、ほとんどの者は就職する。研究者や教育者といった高等な知識を必要とする職業を目指す者は大学に通うこともあるが、義務教育とは違い高額な学費がかかるのでたいていは貴族や、まだ就職したくない金持ちの坊っちゃんが通うのが通例だ。しかし、この軍学校は卒業すれば大学卒業と同じ称号が貰え、さらに学生という身分でありながら毎月給料が貰えるというとても魅力的な事がある。もちろん普通に就職した場合の初任給の方が多く、それに比べるとその3分の1程度であるが。また給料を貰える代償としてか、軍学校を卒業したら最低3年は軍に従属しなくてはならない決まりがある。そのため軍学校に自ら進んで入学を希望する者は少ない。学生のほとんどは軍からの勧誘や親戚等の薦めで入学するパターンである。

「失礼します〜」

トマースが色々考えているとどうやらルームメイトとなる人物の1人が到着したようだ。

「はっ、はじめまして! 自分トマース・バーンと申す者です」

緊張のあまり変な口調になってしまった。

「これはどうも〜。僕はアルフ・フラホといいまふ〜」

ずいぶんノッタリとした口調だ。よく面接で落とされなかったな。身長はトマースより頭1つ分低い。髪はブラウンとこの国の人間としては一般的な色、そして成人してるはずなのに幼い顔立ちのためか女性と言われても違和感がないくらいに整っている。

「ロッカーに自分の名前が書かれてるみたいだから、アルフ君は・・・そこだね」

トマースは自分の右手にある一画を指差し、それに導かれるようにアルフは自分の荷物をベッドに置き、そのままの勢いに従い自分自身もベッドに倒れ込む。

「ア、アルフ君?」

「う〜ん、寝心地はまあ良さげ?」

どうやらベッドはお気に召した様だ。


「そういえばアルフ君、専門は何希望してるの?」

専門というのは専門学科のことである。軍というといかにも戦闘のプロを育てるというイメージがつきまとう。確かに戦闘のプロも育てるがそれだけでは基地機能が働かない。戦闘に必要な剣、槍、弓、魔法具等といった武器をメンテナンスする部隊、長距離移動や戦闘に必要な軍馬や地走竜、飛行竜を飼育する部隊、居住区を管理する部隊・・・等々、実際に戦場に出ないが戦闘員をサポートしたり基地を運営するための作業が専門という軍人が多数いるのだ。また軍の任務は、国を敵から守るというのはもちろんであるが、旧世界の遺産発見、竜を使った輸送といった任務もある。平和な現状では竜を使った輸送、空においては大型飛行竜による旅行を目的とした人員輸送、地上においては長距離移動となると馬車よりも地走竜を使ったほうが持続的にも速度的にも効率良い。そしてこれらの竜は軍が管理しているため今や輸送手段として欠かせない竜による稼ぎは国の財源確保としてなくてはならない事業となっている。

「君付けはいらないよ〜。僕もトマースって呼ぶから。僕は〜、飛竜管制かな〜。」

寝転んだままノッタリと応えるアルフ。

「そうなんだ、飛竜管制」

トマースはつぶやきながら、共に入学した桃色の髪をした幼馴染を思った。

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