ばか
掲載日:2016/03/14
僕は誰かになりたかった。
誰でもない自分が、なにより嫌いだったから。
何をしないでも目立ってしまう、誰よりも物事が上手くいってしまう自分が嫌いだった。
面白くないので、僕は自分を演じた。
斜に構えることが物事を困難にすると考えた。
人に難癖をつけた。
嫌われ者と仲良くした。
僕はますます目立った。
嫌われ者には友ができた。
僕以上にたくさん。
僕は誰かになりたかった。
同じ土俵で笑ってたかった。
一定の速度で歩みたかった。
斜に構えれば、構えたなりに成果を上げた。
視点の違いを褒められた。
僕はますます目立っていった。
一目置かれた。
距離を取られた。
言っていることがわからないと言われた。
何を考えているかわからないと言われた。
勉強は相変わらず得意だった。
人並み以下に努力した。
人並み以上に出来てしまった。
困れば助言を求められた。
新しい考えを求められた。
僕は誰かになりたかった。
受け身でいい誰かになりたかった。
ただの馬鹿になりたかった。
意味のないことを言うようになった。
空気を読まないことが馬鹿だと思った。
何を考えているかわからないと言われた。
なにより考えているか、わからない友達ができた。
同じ土俵にない友達ができた。
僕は未だに彼等を理解できていない。
彼等は僕に場所をくれた。
彼等は僕を迎えてくれた。
僕ははるかに馬鹿だった。




