22 魔導士の焦り。
「……んん」
ロクはぼんやりとする頭で覚醒し、何だったかな、と辺りを見回す。
「……っ! そうだっ! ヌヴィっ!!」
ロクは霞がかかったような頭の中を振り払い、すべてを思い出す。
だが、すでにそこにはヌヴィの気配はなく、自身の傍らにはリコベルが寝かされていた。恐らくは魔力抵抗の加減で自分の方が先に目覚めたのだろう。
「おいっ! リコっ……」
「……へっ? なに?」
リコベルは寝ぼけ眼で覚醒すると、すぐはっと、我に返ってヌヴィが居たベッドを見た。
「これって……」
「俺もお前もヌヴィに一杯食わされた。多分、これから何かがあるはずだ。まだ間に合えばいいんだが……あれからどれくらい時間が経ってっ!?」
そこまで言って、ロクは気がつく。
「そうだっ! アビスはっ!!」
ロクはまさかと思いながらも、はしご階段から飛び降りる。
「アビスっ!!」
だが、返ってくる返事はなく、人の気配も感じられない。
「あいつ、どこにっ」
「ちょっ!? ロクっ?」
リコベルの呼び止める声にも構わず、扉を開け放つと、
「わぉっ! 先輩、どうしたんですか? そんなに慌てて」
そこには、驚いた表情をしたフレアが立っていた。
「フレア、何がどうなってる?」
ロクは、焦る気持ちをそのままに、フレアの肩をつかんで揺すった。
「……勇者が、現れました」
「っ!?」
ロクは、その予想を遥かに上回る言葉に驚愕し、話の続きを促す。
「今、グレンさんとヌヴィが交戦中です」
「場所はどこだっ! アビスもそこに居るのかっ!!」
ロクは、あんな状態で戦えるわけがない、とヌヴィの体を思い出す。同時に、アビスがそんな危険な場所にいると思うと、居ても立っても居られなかった。
「アビスは、恐らくヌヴィを探しに出たのかと……とにかく説明はあとです。彼女の衣類などあればお願いします」
フレアは、すべてを知っている顔で答えると、アビスの衣服を取りに戻るロクの背中に向けて、すみません、と小さく零した。




