盲目の恋
彼女は、目が見えなかった。
特別美人でも、かわいくもない、本当に普通の女の子だった。でもぼくは彼女が好きだった。
どこに行くのも一緒。
なぜかぼくは子供に人気で、でもぼくは子供に興味はなかった。横を歩く彼女にしか、興味はないんだ。
家に帰ったら、自分で家事をしたがる彼女を、できるだけ手伝った。
彼女ができないことは、彼女のお母さんがした。
「いつもありがとうね」
彼女とそっくりな笑顔で、お母さんはぼくに笑いかける。一番そっくりな目は、しっかりとぼくを見つめていた。
でも彼女の目に、ぼくがうつることはない。ぼくを見ていても、ぼくを見ていない。
それでも、愛を感じることは十分出来た。
「明日も一緒に散歩に行こうね」
頷いて、膝に頭を乗せた。
幸せそうに、彼女はぼくの頭を撫でる。
「私ね、あなたがいるとどこにでもいけるんだ」
その言葉をきいて、ぼくは誇らしげになった。
それが伝わるように、力いっぱいしっぽを振る。
「くすぐったいよ」
そういって笑う顔を舐める。
「大好き」
大好き。それはぼくが彼女に伝えたいことでもあった。
ぼくはしゃべることが出来ないけど、君の代わりに目になる。
君はしゃべることが出来ないぼくの代わりに、ぼくの言いたいことを言ってくれる。
ぼくは幸せだ。
君も幸せだといいな。