観察
他者視点入ります。
主人公、現状がもう自分の手から離れたと思ってます。
眼鏡青年 (中田 康)視点
突如として玄関が開かなくなり、状況は一気に緊迫感を増した。
閉じ込められた「招待客」で会議を行い、
入れ替わりに開くようになった洋館内部の探索を行うことにした。
僕をリーダーとして、まずは男6人で「探検隊チームA」を組む。
まあBチームはないんだけど。
危険があるかもしれないから女性5人にはこのまま玄関ホールで待機してもらい、
僕らがいない間に何かあってもいけないから残りの男性5人にも彼女らの警護してもらう。
問題は「あいつ」だ。今は動かないけれど何を企んでいるかわからない。
人数が多いとはいえ、この場に残していってはなにかをしでかしそうで嫌だし、
連れていくのも危険な気がする。
出来ればロープか何かで縛っておければいいんだけどなぁ。
あと、何か武器とか欲しい!
山の中の洋館なんて出来過ぎなシチュエーションだけど、解決するためには行動しなくちゃ!
こういう時は男が頑張らなきゃね!
ようやく私なりの「恐慌」の波がひいた。
彼らの様子の観察に戻る。…ドアの向こうを見に行くことにしたようだ。
自分が示して見せた道ではあるけれど正直あの行動は失敗だったかもしれない。
おかげで直ぐに暴力を振るわれたりはしていないが、恐怖が飽和してしまえば矛先は確実にこちらを向くだろう。
そもそも、原因とされ嬲り殺しになる、というのはあくまで私の勝手な妄想だ。
なかなか高めの可能性を感じても、確実ではなかったのだからじっと様子を見ていれば良かったのかもしれない。
彼ら「探検隊(漏れ聞こえた。どういうノリなのか不思議だ)」が
ここからの脱出方法でも見つけ出さない限り、選択肢は「すぐ殺されるか、少し後で殺されるか」の二つしかない気がする。
下手をしたら脱出方法が分かっても私は置いて行かれる。我ながら悲観的状況だ。
当然ながら私は「探検隊」に入れない。怪しすぎるし、彼らからすれば私は「敵」だろう。
「探検隊」は壁に寄り掛かる私の前を通り過ぎ、ドアへ向かう。
眼鏡青年は私を睨みつけながら、鉄オタは目をそらし、若夫婦(旦那)は忌々しげに舌打ちし、
初老の男性は怯えながらもチラチラと様子を伺い、ぽっちゃりとした大人しそうな中年男性はずっと俯いたままだった。
短気オヤジは意外なことにじっとこちらを観察していた。
私がその目に怖じけるとなぜが少し満足したように頷き、ドアの向うに行った。
数秒後、
「ぎぃやアアアアアアアアアアアアああああ!」
ドアの向こうから絶叫が響いた。