開始
私はタクシーに乗ってここへ来ていた。
そしてこの洋館内に突然現れた訳ではなく、ノッカーを鳴らし入ってきている。
これを言ったほうがいいのかな?
眼鏡青年がへそを曲げても嫌だし、道中寝ていたためここが正しい意味でどこだかわからない。
彼らも出入りは自由、外の様子を見ているのだ。私も根本では違わない。……言わないでおこう。
それにこれが馬鹿げたドッキリで、彼らが皆「仕込み」なら、
私がイリュージョンのように登場しなかったのは当然。
怪奇現象、神隠し以外に「ドッキリ」可能性を考えて思考に余裕ができた。
「今さらではあるけど、現在私達は不法侵入者なんじゃ?電気もついてるし、お住まいの方いますよね?」
常識的な疑問に彼らはどう反応するかな?少しワクワクしながらリアクションを待つ。
彼らは顔を見合わせて、困ったような顔をしたり、ひどく不愉快そうな顔をしたりした。
指摘は正しかったようだ。これで「仕方ない、種明かしを…」と、言ってくれるといい。
「仕方ないんだ」
だけど言葉は途中までしか、望んだものではなかった。
「ここの家の人とは会えてない。玄関以外の扉は窓も含めて一切開かないんだよ。…鍵をされてる様子もないのに」
困惑のような、半笑いのような奇妙な表情をして、眼鏡青年が言う。
そこで私は気づく。ほぼ怪奇現象に巻き込まれているのが確定しているこの状況で、
彼らが完全なパニックに陥ってないのは、「玄関」という逃げ道が用意されていたから。
そして、出来すぎた「舞台装置」に自分こそが騙されているんじゃないかと思えていたからだ。
目眩のするような不安と一緒に、奇妙な確信が浮かんだ。
もう人は増えないだろう。
そしてもう、「玄関」の扉も開かないのだろう、と。
ほかの「招待客」と、ほんの少し違う私。大きく鳴り響いたノッカー。重重しく閉まった扉。
たぶん私は「開始」のスイッチを押し、それを知らせる「鐘を鳴らす」役を振られていた。
前振り長い!!あんまりにも不条理なので導入部を付けたかっただけなのに!!
「みんなも同じ夢を見ればいいヨ✩」と言いたかっただけなのに!!
悪夢を共有させようと言うのが間違いなんでしょう。
題名は終わらないだけど話は終わらせる気でいます。