二話 ピアスとバランス
すごいね石戸谷君。僕今の話が本当に起きたことだって思ってすごく怖かったよ。
本当の話じゃなくて良かった。……横坂さん、つまらないなんて言わない。これが本当の話だったら、石戸谷君が可哀想すぎるよ。
あれ? 石戸谷君。なんでそんな微妙な顔をしてるの?
……なんでもない? そう。それならいいんだけど……。
それじゃあ今から話すね。
まぁ僕が話すのは五人居たら一人は知っているような都市伝説なんだけどね。
短い話です。
あ、そうだ。その前に聞きたいんだけど、この五人の中でスポーツ、部活でもいいや、してる人いる?
……あ、結構いるんだ。
桐沢君は? ……それスポーツって言うかさぁ。……マラソンってスポーツなの? 身体動かすし、スポーツか……。
横坂さんは? テニス部? あ、ちょうどいいね。
いえ八代先輩には聞いてません。城島さんは美術部なんだ。似合うね。
これから僕が話すのはあるテニス選手の話だよ。
スポーツをする人にとってピアスは厳禁だっていう話、皆知ってる?
あ、八代先輩ネタはバラさないで下さいね。……当たり前じゃないかって、八代先輩から出たと思うと信用できませんよ。
なんでスポーツしている人にとってピアスはダメなのかっていうと、バランスが崩れるからなんだ。
片側だけあけるのなんてもう最悪。バランス感覚が狂っちゃうんだって。
それで、そうとは知らずにあるテニス選手があけちゃったんだ。ピアスの穴を。その穴にピアスを通して、それで練習をしたんだ。
そしたら、その選手はバランスをうまくとれないことに気がついたんだ。
今まで無かったのに、ボールの軌道っていったらいいのかな。それが変化して。
そのテニス選手は焦っただろうね。でも、時既に遅し。
ピアスを外しても穴は空いたまま。バランスは狂ったままになったんだ。
……ま、都市伝説は都市伝説だから、そのテニス選手の力が落ちてきた時期とたまたまピアスを空けた時期が重なった、とも言われてるけどね。
横坂さん。どう? この話信じる?
……信じるんだ。ちなみに聞くけど、ピアスは空けてないよね?
……あ、良かった。空けてないんだ。
それじゃあ大丈夫だね。
はい。これで僕の話は終わります。
じゃあ次。桐沢君、お願いね。