『塗りこまれた死体』
空が青く澄み渡っていた。
学校の帰り道、私は歌を歌って家に帰る。
「えーんえんらー、えんえんらー、ゆらゆらゆれーてえんえんらー、おひとつわたしにくださいなー」
ももたろさんの替え歌を歌い、上機嫌に鞄を揺らして身体を揺する。
今日は私の横に彼はいない。彼は照れ屋なのだ。
私はそんな彼のいじらしさにふふふと笑い、「分かっていますよー」と声をあげた。
極度の照れ屋で、ちょっと怖がりで、不器用で、不器用すぎて照れ隠しに友達を使って私を邪険に扱うのだ。
でも、分かってる。本当は私のことが大好きだってことを!
「知っていますよ」
私はあまり可愛くは無い。
私より可愛い子なんてクラスを見渡せばそこら中にいる。
けども彼は私を選んでくれた。彼は私の落としたペンを拾ってくれて、私に優しい声をかけてくれた。彼は私を選んでくれたのだ。
ぴり、と怪我した頬が痛んだ。
私はそれに顔を顰めて頬に手をやる。
その手にも、ぺたぺたと何枚も絆創膏が貼られており、自分でも結構痛々しいなと思えた。
これは彼の友達が私を殴った時についたものだ。
彼の友達は彼に嫉妬しているんだろう。それか、彼のことを取ろうとしている私に嫉妬しているのか。
どっちなんだろう。
彼に私が取られるのが嫌なのか、私に彼を取られるのが嫌なのか。
んんー、と考えて、どうでもいいですね、と言った。
笑った顔に傷は容赦してくれなかった。
私はあいたたたと笑い、もう一つ違う歌を歌う。
「えーんえんらー、えんえんらー、籠の中のえんえんらー、いーつーいーつー見ーやぁーる……」
今日も晴れているのなら、明日も晴れているだろう。
明日晴れたら、夜、彼の元に行ってみよう。私はそう考えて、煙々羅に似ている雲を見て笑った。




