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怖い話をしませんか?  作者: 返歌分式
それぞれのさいご
24/27

『血溜まり池』

 ぼんやりと病室の天井を眺めていた。

 他人と部屋を同じくすることを嫌う俺を気遣って、親が一人部屋にしてくれたので、俺以外にこの病室に人はいなかった。

 開けられた窓から優しく吹き込む風が、白いカーテンをそよそよとはためかせているのを横目で見、俺はなんにも考えることができなくて天井を眺め続ける。


 俺は、一体何をしているんだ。


 なんにも考えることができない。

 あれ、俺ってなんでこんなところにいるんだったけかなぁ。

 ようやく天井から下へと視線をずらすと、そこには吊られた俺の両脚があった。

 自分で見ても間抜けだと思えるその格好は、俺の絶望だった。


 ゆるゆると視線を天井に戻す。

 確か朝に走り込みをしていたんだ。

 走るのが好きで、走ることだけが生きがいで、走ることだけが楽しみだった俺は、その日走っていて、走っていて? ――――あぁ。


 その後、どうしたんだっけかなぁ。


 なんにも考えることができなくなっている。

 早く学校に行きたい。学校に行って走って、学校に行くのに走って、走って走って走って、…………、……、



 チッ、チッと時計の音が聞こえた。

 俺は横に目を向ける。そこには目覚まし時計があった。

 友達が、時計が無いと不便だろうと俺にくれたやつだ。

 時計は音を立てながら時間を刻んでいく。

 この時計は何回回ったか。

 俺が走らなくなって何回、この時計は、



 チッ、チッ、チッ、チッ、



 あぁ、そういえば。

 そういえばあの時、池を見たんだった。

 学校の、正門ではなく裏手の門から俺はその日出て、いや出る前に俺はそれを見たんだ。

 いつもなら立ち入り禁止と書かれた扉があるはずだったんだ。

 裏手の門の近くに不自然に建つ白い倉庫。一体何に使うのか分からない、真新しく建てられたのか汚れが少ないそれの扉を、雁字搦めにする鎖。その上に立ち入り禁止と書かれたプレートが、いつもなら、そういつもならかかっているはずだったのだ。


 だけど今日は、その時は珍しくも鎖が解け、立ち入り禁止と書かれたプレートはだらりと垂れ下がっていた。

 俺は珍しく思った。

 好奇心に、勝てなかった。

 俺はその倉庫の扉を開けた。

 倉庫の中に床は無く、地面に掘られた池がそこにあった。


 その池は赤黒く染まっており、カビと埃と鉄の匂いを漂わせたそれに、俺は気持ち悪くなって逃げ出した。



 あぁ、そうだ、あれだ。

 あれを見た次の日、俺は、俺は。



 天井を見飽きた俺はゆるりと目を瞑る。

 そして夢を見た。

 雁字搦めにされた倉庫の戒めを解き、その池に真新しい赤い水を自身から注ぎ入れる未来の俺の夢を。









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