『首切り桜』
私は待っていた。
どきどきと高鳴る胸を押さえて息を吐く。
落ち着き無く自身の着ている制服の裾を直し、意味もなく鞄の中に入っている携帯をチェックした。
まだかな、と小さく呟けば、忙しない私をたしなめるように桜の花びらが私の周りをひらひらと舞う。
それに目を向け気を取られた私は、一瞬だけだけども時間を忘れることができた。
入学式があって少し。私は学校の桜の木の下にいた。
ここで待っていてね、とメールで連絡があったのだ。だから私は待っている。
あの子は私に優しくしてくれたから。私はあの子のことが好きだから。
男の人とは違って女の人はきっと私を裏切らない。私はあの子のことを愛しているんだ。
今まで交際してきた男共を思い浮かべて、それらは全て身体目当てだったことを思い出す。
最初はそうじゃないのだ。最初はそこらへんにいる男女のように、愛し愛される関係でいられた。なのに、男共の愛はすぐに無くなる。愛は無くなってそこには何も残らなくなる。
いつもいつもそうだった。
私は何回も何回も男共に裏切られてきた。
だけど、彼女は男ではない。
身体目当てではないだろうから、今度こそきっと永遠に結ばれる。
私は彼女を待った。桜がひらひら、ひらひらと目の前を舞い――――
「待ったぁー?」
「うーわー! 本当にいるんだ!」
「レズの子って初めて見た私ー! 何? 男に相手されないわけー?」
私の夢は砕けて散ってしまった。
その半年後、首と胴体が切断された私の死体が桜の木の下で発見される。




