十二話 自分の話
……あぁ、終わり。そう。終わりなんだ。
煙、ねぇ……。ふーん。だから君は焼いたんだね。
なんだっけ。その煙々羅が欲しくて……。
なんだい、その顔は。
そんな目で僕を見るなよ。
見るなって。
見るなって言ってるだろ!!
……。
……。
あぁ、それで次は僕だっけ?
僕の話、か……。
……。
……。
まぁいいや。どうせ皆知ってるんだしね。
それじゃあ話そうか。
なんというかねぇ、俺は人のことを知ることができるんだよ。
ぼんやーりと、それはもうゆらめく煙のような曖昧さでその人が今までやってきたこと、今まで歩んできた道のことを知れる。
こういうの、超能力って言うのかなぁ?
僕が自分のこの能力の異端さに気付いたのは小学低学年の時。
うんうん。俺がこの力を振るった時、それはもう周囲の人間は気味悪がったね。
俺にとっては普通の出来事だけど、周りの人間はそうじゃないみたいだし。
僕はね、別に周りの人間が俺のことをどう思おうがどうってことは無いんだよ。
だけどね、『目』だけはだめなんだ。
好奇の目が嫌だ。嫌悪の目が嫌だ。疑惑の目が嫌だ。侮蔑する目が嫌だ。
目って本当に正直者だからね。嫌なんだ。見られるのが嫌だ。
だから皆あまり僕を見ないでね? 嫌なんだよ。キモチワルイ。
……あぁ、根暗君。君は今疑惑の目をしているねぇ……。
その目、嫌いだなぁ……。嫌いだなぁ……。
石戸谷君の目も、嫌いだなぁ……。嫌いだなぁ……。
嫌いだよ、皆。僕をそんな目で見るな。嫌いだ。嫌いだ……。
……。
あぁそうだ。いいことを思いついた。
根暗君。そんなに僕が疑わしいのなら、僕が証明してやるよ。
そうだなぁ。まずは城島さんからいこうか?
僕は君みたいな犯罪者は嫌いなんだよ。
あのね、城島君はね、放火したことがあるんだよ。
あぁ、すっごく驚いてるね。いい気味だ。
でね、根暗君。城島君は何を燃やしたのかって言うとね、家、なんだ。
なんだか聞き覚えがあるだろ? そうだよ。さっき本人が話していた話さ。
城島さん。きっと煙々羅が欲しかったんだろうね?
あぁそうか。その放火した家の人が好きだったんだ。へぇ。だから欲しかったんだ。
ははは。震えてるね。いい気味だ。
……なんだい、葵ちゃん。
「そんな言い方はあんまりじゃないですか!」って……。君、何言ってるの。
それは犯罪者だよ? 人を殺してるんだよ?
言い方が悪いとかなんだとか、どうでもいいよ。
言われるほどのことをしてるんだから、それを庇う葵ちゃんはどうなんだろうなぁ。
ただの自己満足の正義で庇うのはどうなんだろうなぁ。
そんな奴、早く殺しちゃえよ。
あ、それでね根暗君。そこの桐沢君はね、実は僕と同じ学年になるはずだったんだよ。そうそう、ダブリ。
彼はね、走るのが好きみたいでさぁ。ある日朝っぱらからご苦労なことに走り込みをしてたんだ。そしたらね、交通事故にあった。
半年ほど休んで、留年。可哀想にね。よほど追い詰められてたんだろうね。
追い詰められた人間はオカルトに転じやすいって言うけど、桐沢君もそうだったんだろうねぇ?
カーワーイーソー。……でも後輩にあたるのはよくないなぁ。
でね、根暗君。葵ちゃんなんだけどね。葵ちゃん実はエイズ持ちなんだぁー。アハハハ。
やんちゃしすぎたってことだよねぇー。あぁ面白い。面白いなぁー。
あと葵ちゃんレズなんだー。
……あれ? エイズのことは本人も知らなかったの?
あぁそりゃあゴクロウサマ。そりゃあゴシュウショウサマ。やっちゃったねぇ。バラしちゃったよ。
それでね、根暗君。
そこの石戸谷君。実はそいつが『遠野』なんだよー! うわぁもうびっくり! びっくりだよねぇ!
それに『紗枝』ちゃんのことを貶めたのはお前だろー!?
さっきお前、なんで自分が俺のことを恨んでいるのか分かるはずもないって言ってたけど、残念! 知ってるっつーの!
あの時俺見てたから! 見てたからな!
あーあぁ、『紗枝』ちゃんホンット可哀想!
何にも知らない『紗枝』ちゃんは、お前が肝試しに行くかと誘ったから来たんだよねー!
お前は『紗枝』ちゃんが自分のことを好きって知ってたから誘ったんだよねー!
かっわいそうな『紗枝』ちゃん。もう自殺しちゃったんじゃない?
ホント下衆だよね、お前って。
でね、根暗君。君ってイジメにあってるんでしょ? 手首大丈夫?
今日はよくこんなところに来たね。すごい勇気だよ。
はいはい褒めてあげる。
そうだ根暗く、