眠れない夜
三題噺もどき―きゅうひゃくじゅう。
コップを傾け液体を口内に流し込む。
とろりとした触感と、甘い匂いに満たされる。
程よい冷たさが体を内側から冷やす。
「……」
デスクライトをつけ、机に向かっていた。
時間は……もう数時間すれば明日に変わるくらいの時間だ。
母はとうに眠っている。
妹2人も布団に入るのは早いので、おそらく寝ているだろう。
「……」
私も布団に入ってしまえばいいのだが、なんとなくそんな気にもなれず机に向かっている。
何かをしているわけでもない。これで勉強でもしていれば、よかったのかもしれないが。
生憎、いつものようにスマホをいじっているだけである。
「……」
なんとなく喉が渇いた時に、いれてきたココアを飲むだけで。
それ以外はずっとスマホに魅入っている。
何も面白いものはないのに。
「……」
時期外れの桜の映像や、今流行りのアイドルの映像、動物の映像。
ジャンルに偏りがあるようでないような短い動画の羅列を、ぼうっと眺めている。
さっさと寝てしまえばいいのに。
「……」
一日中学校に居る時と違い、夏休みに入ってからは一日の半分ほどしか学校に居ない。
そのせいか、それほど疲労することもなく、学校から帰ればゴロゴロとしているだけだから、眠るに寝れないのだ。
半分程と言っても、授業が終わった後に推薦の練習をしたり指導を受けたりしているし、たまに昼食まで食べてから帰るので、15時くらいまでいることはあるが。
「……」
それでも普段とは比にならないくらい体力が余っているらしく。
自分自身そんなに体力はない方だと思っていたのだけど……そうでもなかったらしい。年相応とはいかなくてもそれなりの体力はあり、それが余ると眠れなくなる。
程よい運動というのはやはり必要なのだろう。
「……」
しかしまぁ、眠れないからとこうしてスマホをいじってばかりもよくないのだろうけど。
そう思って、最初は机の上にえんぴつと原稿用紙と問題用紙を広げて、小論文でもと思っていたけれど……それも全く手につかず現状にいたっている。
「……」
ココアを飲んで、スマホを眺めて。
スマホを眺めて、ココアを飲んで。
たまに思いだしたように写真フォルダを開いて。
「……」
先日の写真をそれとなく見返して。
何かをしようと思って見返しているわけでもない。
特にこれと言った目的もないので、早々に閉じる。
またそこから動画を見たり、SNSを眺めたり。
「……」
不毛な時間が過ぎていることは分かっているけれど。
何かをした方がいいのではと思っているけれど。
―なら何をするのかと言われると何もしたくないし。
「……」
気付けば日付は変わり、室内はひんやりと冷えている。
クーラーの効きがあまり良くないので、点けてすぐはまだ少々暑い。
しかしそれも時間が経てば当然、冷えてくるわけで。
「……」
さすがに寒くなってきた。
かと言って、温度を下げたりすると妹が暑いと言って起きるし、多分この部屋もまた暑くなる。我が家は姉妹三部屋仕切りなしで繋がっていて、クーラーは一台なので……。
「……」
冷たいココアを飲んでいたこともあって、鳥肌まで立っている。
足の指先は、冬かと思う程に冷え切っている。
まぁ、実際の冬はこんな冷たさではないのだけど。
「……」
それにようやく少し、眠くなってきた。
布団に入ってもまたスマホはいじるだろうが、そのまま寝落ちしてしまってもいいようにしておくのは策かもしれない。
無駄に時間を消費してしまったが、今に始まったことじゃない。
「……」
デスクライトを消し、すぐ後ろにあるベッドに潜る。
夏用の薄い掛け布団を被り、充電コードが枕元にあることを確認する。
コップは……まぁ、明日で良いか。
「……」
布団に入ると眠気がなくなるのはなんという現象なんだろう。
いつ眠れるか分からないが。
とりあえず、寝るとしよう。
お題:ココア・桜・えんぴつ




