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古本
人間が一人居たとしよう。其の人は寝ているのだか、死んでいるのだか、生きているのだか、さっぱり分からない表情を浮かべて居た。古い本が人間を取り巻いていて、その部屋は古い本ののりづけの匂いで充満していた。まるで古い本屋の様だが、人間は別に本屋を営んではいない。ぼさぼさかつ、艶の無い髪を人間はだらだらと伸ばしたまま放置しているようであった。それはとても接客が出来そうな格好ではない。
そうつまりは、
人間は唯、趣味で本を集めているだけなのだ。
(何も難しいことはないよ、それだけなんだ。)
深く考えなくてもいいのです。ただ、事実をそのまま受け止めればいいのです。