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白イ糸
耳から一筋、白イ糸が細く垂れている。ゆらりゆらりと揺れる様は、とても無気味な様のはずだが、もう見なれて無気味何ぞとは思わなくなった。ただ、白イ糸が揺れているだけだ。
そういえば、友人はその白イ糸が見えない様だ。ある日友人がうっかり自分の白イ糸を切ってしまった。見えていなかったのだから仕方がない。ぱちんと音をたてて切れた糸はゆらりと揺れて友人の肩に落ちた。すると友人は突然奇声を発し、倒れた。一体何故なのだろう。
白イ糸が友人の肩で揺れていた。
白イ糸は命ノ糸
(嗚呼憐れなり、憐れなり。)
友人を助けることは出来なかった。もちろん、その糸の危険を知らなかったからだ。