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オモテナ師  作者: N旅人
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第9話 光の欠片

第9話 光の欠片

負の将との敗北から、二日が経っていた。部員たちは部室に集まっていたが、誰も言葉を発しない。五十鈴先輩は壁に寄りかかり、凪は床に座り込み、美咲は膝を抱えて震えている。陽菜は窓の外を眺め、ぼんやりとしていた。翔子はまだ異界に囚われたまま。涼子は病院で意識が戻らない。岩淵先生が、静かに口を開いた。「君たち……もう、終わりだと思っているのか?」誰も答えられない。先生はゆっくりと歩み寄り、陽菜の前に立つ。「陽菜。おもてなしの力の源を、忘れたのか?」陽菜は首を振る。「忘れてません……。人の絆、ポジティブなエネルギー。でも、今の私たちに、そんなもの残ってない」先生は穏やかに微笑んだ。「違う。絆は、壊れたわけではない。ただ、傷ついているだけだ」先生は古い書物を取り出し、ページをめくる。「隠師の力は、おもてなしで繋がる人の絆から生まれる。観光客の笑顔、仲間同士の信頼。それがエネルギーになる。でも、今の君たちは、仲間同士の絆を忘れている」美咲が顔を上げる。「でも……私たち、みんなバラバラで……」「だからこそ、繋ぎ直せばいい」先生の言葉に、陽菜は目を伏せた。夕方、陽菜は一人で病院に向かった。涼子の病室に入り、ベッドサイドに座る。「涼子先輩……ごめんね。私、リーダー失格だよ」涼子は眠ったまま。陽菜はそっと手を握った。「みんな、傷ついてる。先輩がいないと、もっとバラバラで……」涙がこぼれる。そこに、五十鈴先輩が入ってきた。「陽菜。ここにいたのね」先輩は隣に座り、静かに言う。「私も、責任感じてる。リーダーとして、みんなを守れなかった」陽菜は驚いて顔を上げる。「先輩が? でも……」「あなた一人に背負わせてたわ。私がもっとしっかりしてれば」二人は黙って涼子を見つめる。その夜、陽菜は翔子のことを考えていた。――翔子ちゃんのトラウマ、ちゃんと聞いてあげてなかった。過去の失敗、仲間を傷つけた罪悪感。みんな、なんとなく知っていたけど、深く触れなかった。陽菜は決意した。翌日、部室で陽菜はみんなを集めた。先生もいる。「みんな……話したいことがある」美咲が不安そうに、凪が興味深そうに、五十鈴先輩が静かに見つめる。陽菜は深呼吸して、口を開く。「私、リーダーとしてダメだった。みんなの気持ち、ちゃんと聞いてなかった。翔子ちゃんの過去も、涼子先輩の分析に頼りすぎて、心を無視してた。美咲ちゃんの怖がってる気持ちも、ちゃんと受け止めてあげられなかった」美咲の目が潤む。「私こそ……ごめん。みんなに迷惑かけて」陽菜は首を振る。「違うよ。美咲ちゃんの結界がなかったら、私たち何度も全滅してた。みんな、必要としてる」凪が小さく笑う。「私も、いつも明るく振る舞ってたけど、本当は怖かったよ」五十鈴先輩が頷く。「私もよ。リーダーぶってたけど、実はプレッシャーで潰れそうだった」みんなが、少しずつ本音を語り始めた。翔子のトラウマ。過去に一人で突っ走って友達を傷つけたこと。それをみんなで共有する。涼子の冷静さの裏にある、完璧主義のプレッシャー。美咲の臆病さは、みんなを守りたい気持ちの裏返し。陽菜は自分の無力感を吐露した。「みんなの痛い、ちゃんと分かち合おう。私たち、絆で繋がってるんだよ」先生が静かに微笑む。「これだ。光の欠片が、ここにある」みんなが顔を見合わせ、初めて笑った。小さな、でも本物の笑顔。陽菜は立ち上がる。「翔子ちゃんを、救いに行こう。みんなで」美咲が頷く。「私も、行く。怖いけど……みんながいれば」凪が拳を握る。「もちろん!」五十鈴先輩が微笑む。「私たちが、隠師よ」病院から、朗報が入った。涼子が、目を覚ました。まだ弱っているが、意識が戻った。みんなで駆けつけ、涼子は静かに言う。「ごめん……心配かけて。でも、みんなの声、聞こえてたよ」涼子も、みんなの本音を聞く。彼女は冷静に、でも熱く言う。「私も、もっと心を開く。分析だけじゃなく、みんなの気持ちを大事にする」チームは、再び一つになり始めた。陽菜のリーダーシップが、静かに復活する。希望の兆しが、見え始めた。負の将はまだ待っている。でも、今の私たちなら。翔子を救い、負の将を倒す。その決意が、部室に満ちた。外では、久しぶりに晴れ間が広がっていた。小さな光の欠片が、集まり始めている。

(第9話 終わり)

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