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オモテナ師  作者: N旅人
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第8話 折れた刃

第8話 折れた刃

異界の暗闇の中で、陽菜と美咲は翔子と対峙していた。翔子の目は完全に赤く染まり、負のオーラが体を覆っている。拳を握る手が震え、いつもの熱血さは影を潜め、冷たい殺意だけが漂っていた。「翔子ちゃん……お願い、戻ってきて」陽菜の声は届かない。翔子は低く笑い、突進してきた。拳が空を切り、地面が抉れる。陽菜はかろうじて避け、美咲が結界を張るが、一撃でひびが入る。「もう、誰も信じない。一人でやった方がいい」翔子の言葉は、彼女自身のトラウマを映していた。過去の失敗、仲間を傷つけた罪悪感。それを負のオーラが増幅し、彼女を支配している。美咲が泣きながら叫ぶ。「翔子ちゃんのバカ! 私たち、翔子ちゃんがいないとダメなんだよ!」しかし、翔子は止まらない。陽菜は防戦一方で、攻撃する隙さえ掴めない。――このままじゃ、翔子ちゃんを傷つけるしかない。そんな思いが陽菜の心を蝕む。そこに、強烈な気配が現れた。暗闇の奥から、巨大な影が浮かび上がる。負人間とは比べ物にならない、濃密な黒いオーラ。人型だが、角が生え、背丈は三メートルを超える。「負の将……!」陽菜の呟き。負の将は低く笑い、翔子を操るように手を振る。翔子が陽菜たちから離れ、将の側に跪く。「よくやったな。お前たちの絆など、脆いものだ」将の声は、頭の中に直接響く。陽菜と美咲の体が重くなり、変身が揺らぐ。負の将がゆっくりと近づいてくる。一歩ごとに、空気が汚染されていく。「ここが、私の本拠地。お前たちはよくここまで来た。だが、ここで終わりだ」陽菜は立ち上がり、鈴の武器を構える。「翔子ちゃんを返して!」総力戦が始まった。陽菜は全力でサポートを発動し、美咲は必死に結界を強化。しかし、負の将の力は圧倒的だった。一振りで結界が砕け、美咲が吹き飛ばされる。「美咲ちゃん!」陽菜が駆け寄るが、負の将の黒い波動が襲う。衝撃で陽菜も倒れ、変身が強制的に解ける。翔子は将の側で、無表情に立っている。負の将が手を掲げ、黒い鎖を放つ。陽菜と美咲を拘束し、負のオーラを注ぎ込む。痛みが体を駆け巡る。心に闇が忍び寄り、絶望が広がる。――私たち、負けちゃうの?仲間が傷つき、救えず、力不足。すべてが無駄だったような気がして、陽菜の目から涙が溢れた。負の将が嘲笑う。「おもてなしの力など、所詮は偽りの絆。人の心の闇を前に、折れる刃に過ぎん」その言葉が、陽菜の胸を刺す。美咲が小さな声で呟く。「もう……戦えない」彼女は泣き崩れ、変身が完全に解けた。陽菜も力尽き、立ち上がれない。負の将は二人を見下ろし、ゆっくりと手を振り上げる。トドメの一撃。その瞬間――光が差した。異界の入り口が開き、五十鈴先輩と凪、そして岩淵先生が飛び込んできた。「陽菜! 美咲!」五十鈴先輩の声。彼女たちは残りのエネルギーを振り絞って駆けつけたのだ。先生が即座に結界を張り、負の将の攻撃を防ぐ。「今だ、逃げろ!」五十鈴先輩と凪が陽菜と美咲を抱え、翔子を睨むが、将の力が強すぎる。負の将が大笑い。「全員揃ったか。なら、一気に片付けてやる」再び戦闘。しかし、疲弊した部員たちでは歯が立たない。全員のおもてなしパワーを合わせても、負の将のオーラを削れない。五十鈴先輩が斬撃を放つが、弾かれる。凪が撹乱を試みるが、無効化される。先生さえ、押され気味。最終的に、全員が倒れ、変身が解けた。負の将は勝ち誇り、黒いオーラを広げる。「これで終わりだ」部員たちは這いつくばり、逃げる力さえ残っていなかった。陽菜は必死に手を伸ばす。「みんな……ごめん」異界から、なんとか脱出。先生の最後の力で、元の世界に戻された。キャンパスの夜。部員たちは倒れ込み、誰も動けない。美咲が、地面に伏したまま泣き崩れた。「もう戦えない……。私、怖いよ。みんな死んじゃうよ」彼女の言葉に、誰も反論できなかった。五十鈴先輩は唇を噛み、凪は空を見上げ、先生は静かに目を閉じる。陽菜は、ただ絶望に包まれていた。――私たちの刃は、折れた。チームの解散が、頭をよぎる。このままでは、もう立ち上がれない。負の将の笑い声が、耳に残っていた。翔子はまだ、向こう側に囚われたまま。希望は、どこにも見えなかった。夜空には、星一つ輝いていない。

(第8話 終わり)

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