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オモテナ師  作者: N旅人
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第7話 負の連鎖

第7話 負の連鎖

涼子の重傷から一週間。病院の集中治療室で、彼女はまだ目を覚まさない。部員たちは交代で看病を続けていたが、誰もが顔を曇らせていた。「涼子先輩……早く起きてよ」美咲がベッドサイドで呟く。陽菜は隣で黙って手を握っていた。表の活動は完全に停止。観光客の笑顔を見る機会がなく、おもてなしのエネルギーは枯渇しつつあった。隠師としての力も、明らかに弱まっている。そんな中、負人間の襲来は止まなかった。夜のキャンパス。連続して三日目だ。今夜も、黒いオーラをまとった負人間が現れた。今回は一体だが、強さが違う。動きが速く、攻撃が的確。「またか……!」翔子が変身し、真っ先に飛び出す。五十鈴先輩が叫ぶ。「翔子、待ちなさい! 陣形を崩さないで!」しかし、翔子は聞かない。一人で敵に突っ込み、拳を連打する。「もう、いい加減にしてよ!」彼女の攻撃は当たるが、敵は耐える。逆に黒い爪が翔子を捉え、彼女を吹き飛ばす。陽菜たちが援護に入る。美咲の結界、凪の撹乱、五十鈴先輩の斬撃。しかし、チームは疲弊していた。連携が乱れ、隙だらけ。負人間が笑うようなうなり声を上げ、翔子を狙う。「翔子ちゃん!」陽菜の警告が遅れる。負人間の爪が翔子を捕らえ、黒いオーラが彼女の体に絡みつく。「離せ……!」翔子は抵抗するが、力が入らない。負人間は彼女を引きずり、キャンパスの奥――暗い林の方へ連れ去ろうとする。「翔子!」五十鈴先輩が追うが、別の負人間が現れ、道を塞ぐ。どうやら囮だった。陽菜たちは撤退を余儀なくされた。翔子を救えなかった。部室に戻った後、誰もが沈黙していた。五十鈴先輩が、珍しく声を震わせる。「私の指揮ミスよ……。翔子を止められなかった」美咲は泣き、凪は俯いたまま。陽菜は拳を握りしめる。――また、仲間を失った。その夜、翔子は負人間の本拠地らしき異界の空間に囚われていた。暗い霧に包まれた場所。黒いオーラが濃く、息苦しい。翔子は鎖のようなもので拘束され、負のオーラに浸食されかけていた。「くそ……私、なんであんな単独行動しちゃったんだろう」彼女の心に、闇が忍び寄る。過去の記憶が蘇る。中学時代。翔子は熱血で友達が多く、いつもみんなを引っ張っていた。でも、ある事件で――友達を守ろうと一人で喧嘩に飛び込み、相手を重傷に追い込んでしまった。あの時、友達は助かったが、翔子は孤立した。「また、同じこと繰り返してる……。みんなに迷惑かけて」負のオーラが、そのトラウマを増幅する。「あなたはいつも衝動的ね。一人で突っ走って、仲間を危険に晒す」幻聴のような声。負人間の囁き。翔子の目が、徐々に赤く染まり始める。一方、部員たちは救出作戦を立てていた。陽菜と美咲が、異界の入り口を探す。五十鈴先輩と凪が先生と相談。「翔子ちゃんを、絶対救う」陽菜の決意。しかし、チームは限界に近かった。涼子は意識不明、翔子は捕まり、エネルギーは枯渇。美咲が陽菜にすがるように言う。「陽菜ちゃん、私たち……もうダメかも。みんなバラバラで、力が出ない」陽菜は答えられない。救出に向かったのは、陽菜と美咲だけだった。他は疲弊しきっていた。異界の入り口――キャンパスの古い井戸近く。変身し、飛び込む。暗い空間。負のオーラが濃い。奥に、翔子が囚われている。「翔子ちゃん!」陽菜の声に、翔子がゆっくり振り返る。目はすでに半分赤く、負のオーラに侵されている。「来ちゃったんだ……。もう、遅いよ」翔子の声が冷たい。彼女は鎖を振り払い、立ち上がる。負人間の力に支配されかけ、陽菜たちに向かってくる。「翔子ちゃん、目を覚まして!」美咲が結界を張るが、翔子の拳がそれを砕く。陽菜は戦いながら叫ぶ。「私たち、仲間だよ! 一人で背負わなくていいんだよ!」翔子の動きが一瞬止まる。心の奥で、トラウマが揺らぐ。でも、負のオーラが再び強まる。「仲間? 私なんか、いつも失敗ばかり……」戦いは激しかった。陽菜と美咲は防戦一方。翔子の心の闇が、露呈していた。チームの危機は、深まる一方だった。このままでは、全員が負の連鎖に飲み込まれる。救えるのは、誰か。陽菜は、翔子の拳を真正面から受け止めた。「痛いのは、私たちだけじゃない! 翔子ちゃんの痛いも、知ってるよ!」その言葉に、翔子の目から涙がこぼれる。でも、まだ闇は晴れない。危機は、続いていた。

(第7話 終わり)

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