第18話 新生の聖地
第18話 新生の聖地
神紀2026年、春。黒影通信社の解体から、数ヶ月が経っていた。黒崎影人の逮捕と会社の上層部の辞任により、メディア界は一時的に混乱した。しかし、世論は完全に御師たちの側に傾いていた。神国伝説は、もはやフィクションではなく、「神国の聖地を守った真実の物語」として、全国に知れ渡っていた。陽菜は、神国神社の近くに新しく建てられた「おもてなし殿」で、仲間たちと集まっていた。殿は、支援者たちの寄付と国の補助金で建設された。表向きは観光施設、裏では隠師たちの拠点。巫女風の衣装を着た新しいメンバーたちが、観光客をもてなしながら訓練を重ねている。陽菜は大学4年生。卒業論文の執筆準備をしていて、忙しい日々を送っていた。翔子は副代表として、熱血指導を担当。涼子は戦略・分析担当、美咲は癒しと新人教育、凪は広報とイベント企画。五十鈴先輩は顧問として、時折訪れる。岩淵先生は、本拠地の建物の奥で静かに茶を点てていた。「君たち、よくここまで来たね」先生の声に、みんなが微笑む。黒影通信社の解体後、空白となったメディア枠に、御師たちを支持する新しい報道が増えた。観光客は、過去最高を記録。神国の街は完全に復興し、笑顔が溢れていた。おもてなしのエネルギーは、かつてないほど満ちていた。隠師の力は、強大になっていた。負人間の気配は、完全に消えていた。陽菜は、本拠地の建物の屋上で一人、空を見上げていた。――これで、本当に終わり?黒崎影人は、負の将の上位存在だった。だが、彼は「一端」に過ぎなかったのかもしれない。負のエネルギーを操る本当の源は、まだどこかに潜んでいる気がした。しかし、今は平和だった。翔子が屋上に上がってきた。「陽菜、みんな待ってるよ。新メンバーの歓迎会!」陽菜は笑う。「すぐ行く」本拠地の建物の下では、新旧のメンバーたちが集まっていた。新しい世代の女子大生たち。神国伝説に憧れて、入部した子たち。美咲が優しく指導し、凪が盛り上げる。涼子がデータを示す。
「エネルギーの蓄積率、過去最高よ」五十鈴先輩がビデオ通話で参加。「みんな、誇らしいわ」陽菜は、みんなの中心に立つ。「私たちは、表の笑顔で人々をもてなし、裏で聖地を守る。それが、御師の使命」新メンバーたちが、目を輝かせる。「はい!」歓迎会は、笑顔に満ちていた。巫女舞の披露、物語の朗読、簡単なパフォーマンス。観光客も巻き込み、殿は賑わう。夜、陽菜は川のほとりに立っていた。仲間たちが、そっと寄り添う。翔子が言う。
「私たち、強くなったね」涼子が頷く。「絆が、すべてを変えた」美咲が手を握る。「これからも、みんなで」古市が笑う。「神国伝説は、続いていくよ」五十鈴先輩の声が、スピーカーから。「新生の聖地を、守りましょう」陽菜は、川の流れを見つめる。負の将との戦い、財政難、メディアの策略。すべての苦難を乗り越え、ここに立っている。希望と喪失が共存した終わりではなく、希望が勝った終わり。聖地は、新生した。おもてなしの心が、永遠に続く。陽菜は、みんなと手を繋ぐ。「ありがとう。みんながいてくれてよかった」夜空に、星が輝く。神国の聖地は、静かに、しかし力強く、光を放っていた。これで、物語は終わり。でも、御師たちの伝説は、続いていく。
(第18話 終わり)




