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オモテナ師  作者: N旅人
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第12話 今後について

第12話 今後について

負人間との決戦から、数週間が経っていた。神国の街は、表面上は少しずつ復興の兆しを見せ始めていた。壊れた建物に足場が組まれ、観光地の商店街では修繕工事が進む。しかし、観光客の足は遠のいたままだった。ニュースは連日、被害の大きさと復興費用の捻出難を報じている。神国大学のキャンパスも、静かだった。学生たちの会話は、事件の被害や経済の悪化について。笑顔が少ない。おもてなし部の部室。みんなが集まっていたが、重い空気が漂っていた。陽菜は新聞を広げ、声を落とす。「国の財政が、相当厳しいみたい。復興費用で予算が逼迫してて……」翔子が拳を握る。「それで、私たちの支援が切られるって話、本当かよ?」五十鈴先輩が静かに頷く。「大学の理事会から、正式に通知が来たわ。おもてなし部への国からの財政援助、中止案が可決された」部室が凍りつく。岩淵先生が、ため息をつく。「君たちの表の活動しか知らない一般の人たちから見れば、私たちはただの観光PRサークル。国の金を注ぎ込む意義が薄い、と」涼子がノートを閉じる。

「世論も、そうよ。SNSや新聞で、『税金の無駄遣い』って声が大きくなってる。被害の復興にお金が必要なのに、アイドル活動に予算を使うなんて、って」

美咲が小さな声で言う。「私たちのせいだよね……。戦いが街を壊しちゃったから」

誰も否定できない。おもてなし部は、国からの援助を受けて成り立っていた。裏の隠師活動のための資金も、表の観光PR予算に紛れ込ませていたのだ。それがなくなれば、活動自体が成り立たなくなる。凪が、珍しく暗い顔で呟く。「これじゃ、部活続けられないよ。お金稼がないと、衣装も場所も、何もかも……」陽菜は窓の外を見る。荒廃した観光地の写真が、新聞に載っている。

貧富の差が激しくなっていた。復興が進む地域と、放置された地域。観光業に頼っていた人々の生活が、崩壊しかけている。国の経済は、実質的に機能不全に近い。物価は上がり、失業者が増え、負の感情が街に満ち始めていた。

――私たちの勝利が、こんな世界を作った。後悔が、再び胸を締めつける。五十鈴先輩が立ち上がる。「でも、諦めるわけにはいかないわ。私たちは、まだ隠師よ。聖地を守る使命がある」翔子が頷く。「そうだよ! お金がないなら、自分たちで稼げばいい!」でも、涼子が冷静に言う。「現実的に、難しいわ。表の活動が縮小すれば、おもてなしで得るエネルギーも減る。隠師の力も、弱くなる」美咲が俯く。「観光客が来ないのに、どうやっておもてなしするの……?」部室に、沈黙が落ちる。陽菜はみんなの顔を見回した。勝利したはずだった。負の将を倒し、仲間を救った。でも、現実は厳しい。

国からの援助が止まり、おもてなし部は自力で生きていかなければならない状況に追い込まれた。活動が縮小せざるを得ず、エネルギーが半減する苦しい境遇。――これが、私たちの代償。先生が静かに言う。「世論は変わるかもしれない。でも、今は耐える時だ」陽菜は拳を握る。「みんなで、乗り越えよう。私たちなら、できるよ」でも、心の奥で、不安が広がっていた。負の感情が街に満ちれば、また負人間が生まれるかもしれない。真の黒幕が、まだいるという警告。すべてが、終わっていない。部室の窓から、曇った空が見えた。

復興の道は遠く、希望は薄い。おもてなし部の未来は、不透明だった。外では、冷たい雨が降り始めていた。みんなの胸に、深いため息が残った。この苦境を、どう脱却するのか。

答えは、まだ見えていない。

(第12話 終わり)

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