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オモテナ師  作者: N旅人
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第11話 現実世界

第11話 現実世界

異界での決戦が終わり、部員たちは森からよろよろと抜け出した。夜の神国神社周辺は静寂に包まれ、遠くで虫の声が聞こえるだけだった。みんなで肩を支え合い、大学に戻る道を歩く。翔子が、ぽつりと呟いた。「勝った……よね?」誰もすぐには答えられなかった。負の将は倒した。翔子も救い出した。でも、負の将の最後の言葉が、みんなの胸に重く残っていた。翌朝。陽菜は一人で神社に向かった。いつもなら観光客で賑わう参道が、異様に静かだった。――あれ?鳥居をくぐると、目の前の光景に息を飲む。参道のお店の半分がシャッターを下ろしている。残りの店も、商品がまばらで、店主の顔が疲れきっていた。観光客の姿はほとんどない。さらに内側へ向かうと、状況はもっと深刻だった。いくつかの土産物店はガラスが割れ、修復用のシートが貼られている。道路にはひび割れが走り、街路樹が倒れたまま放置されていた。負人間との戦いの余波――異界の衝撃が現実世界に漏れ出し、地震のような被害を出していたのだ。陽菜はスマホを取り出し、ニュースを検索する。『神国市を中心に謎の地震と暴動が発生 観光地に深刻な被害』『観光客激減 神国市周辺の経済に打撃』記事には、壊れた建物、避難する人々、困惑する店主の写真が並んでいた。――私たちの戦いが、こんなことに……陽菜の足が震える。大学に戻ると、部員たちが部室でニュースを見ていた。翔子が拳を握りしめる「これ……私たちの戦いのせいだろうか」五十鈴先輩が静かに言う。「異界の戦いが、現実世界に影響を及ぼしたのね。負の将の力が強すぎたせいよ」美咲が俯く。「観光客がいなくなっちゃった……。お店の人たち、困ってる」涼子がノートを閉じる。「被害額は相当なものよ。街の復興には莫大な費用がかかる」

凪が、珍しく声を落とす。「私たちのせいで、みんなが苦しんでる……」

陽菜は、みんなの顔を見回した。負人間との戦いには勝利した。仲間を救い、負の将を倒した。でも、完全に被害を食い止められなかった。街は荒廃し、人々の生活が壊れた。

後悔が、胸を締めつける。岩淵先生が部室に入ってきた。「君たちも見たね。現実世界の被害を」先生の声は穏やかだったが、重い。「私たちは聖地を守った。でも、その代償は大きかった」陽菜が呟く。「私たちの戦いが、みんなを傷つけた……」先生は首を振る。「違う。負の将が引き起こしたことだ。君たちは、できることをした」でも、陽菜の心は晴れない。

その日、陽菜は一人で壊れた土産物店を訪れた。店主のおばあさんが、割れたガラスを片付けている。「おばあちゃん、大丈夫ですか?」陽菜が声をかけると、おばあさんは疲れた笑顔を向けた。「ありがとうね。お嬢ちゃんたち、巫女さんのアイドルでしょ? 前まで、よく来てくれてたのに……最近、全然見ないわね」陽菜は言葉に詰まる。「ごめんなさい……」

おばあさんは首を傾げる。「どうして謝るの? あなたたちのせいじゃないわよ。でも、観光客が来なくなっちゃって、店、続けられるかしらね」陽菜は、握っていたお守りをそっと置いて、店を後にした。部室に戻ると、みんなが黙っていた。勝利した喜びは、どこにもなかった。涼子の傷、翔子のトラウマ、街の被害。すべてが、深い傷として残っていた。陽菜は窓の外を見る。荒廃した観光地。笑顔が消えた街。――私たちは、守れたの?疑問が、心を蝕む。負の将は倒した。でも、負の連鎖は、まだ終わっていない。現実世界の傷は、簡単には癒えない。みんなの胸に、後悔と深い傷が刻まれた。夜、陽菜は一人でベッドに横になり、涙を流した。勝利の代償は、あまりにも大きかった。外では、冷たい風が吹いていた。

(第11話 終わり)

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