ランキング3位は嫌です
俺は都会で働いている。 だが、夏休みなので田舎の実家に帰ってきた。滞在は三日の予定だ。
一日目
田舎には森がある。その森の奥には、静かな池がある。 両親とはあまり仲が良くないため、日中はその森で時間を潰している。池のほとりに座り、ぼんやりと水面を眺めていた。自然が好きな俺にとって、それは苦ではなかった。
森を散策し、夕方にまた池へ戻ってきた。
すると、突然、水面から顔が現れた。
「お前、誰だ?」思わず声をかけた。
それはゆっくりと水から上がってきた。女の人だった。裸だった。
「私はエレナ」
「名字は?」
「佐藤」
「そうか」 普通の名字だったので、少しがっかりした。
俺は自分のシャツとズボンを脱ぎ、彼女に渡した。
「ありがとう」彼女は言った。
もう暗くなってきたので、俺は実家に戻った。 パンツ一丁で帰ってきた俺を見ても、両親は何も言わなかった。まるで俺がそこにいないかのようだった。 俺は、生きていないのか?
二日目
俺はまた池に来た。期待していた。 すると、また水面から顔が現れた。
「また会ったな」少し照れながら言った。
「うん!」エレナはまた裸だった。
「どうして裸なんだ?昨日渡した服は?」
「どっかいっちゃった」
「仕方ないな……」 俺は興奮しながら、また服を脱いで渡した。 どうやら俺は変な性癖に目覚めてしまったようだ。 しかし、エレナも露出癖があるのかもしれない。俺のことは何も言えないぞ――と勝手に思った。 エレナはそんなこと、思ってもいないかもしれないけど。
「もう暗いから帰りな」エレナが言う。 俺はもっと彼女と一緒にいたかった。
「いやだよ」――子どもか!? そう言ってから、自分の幼さに気づいた。
「もう、わがままな子ね。エレナのおっぱい吸う?」
「いや、帰るよ」 俺は本能的に身の危険を感じた。
「そう……」
「その服、高いからなくすなよ!」 そう言って、俺は実家に戻った。 またパンツ一丁だったが、両親は何も言わなかった。 本当に家族なのか?俺はとんでもないことを考えてしまった。
「これ、ユニクロじゃん」 エレナはそう言って、池の中へ戻っていった。
三日目
今日は東京に帰らなければならない。 エレナに別れの挨拶をしよう。俺は森の中を歩き、池へ向かった。
池に着くと、エレナはすでに裸で寝ていた。
「エレナ!」 服のことを聞こうかと思ったが、そんなことよりも――
「俺はもう、ここには来られない……だから!俺はお前に服を渡すことができないんだ!!!」 俺は気が狂ってしまったらしい。
「いいよ、ユニクロだし」 エレナは冷たい目でそう言った。
「そうか……」 俺は一人で自己満足していただけだったんだ。
「じゃあな、エレナ……」 そう言って帰ろうとしたその時、目の前に熊が現れた。
俺は死ぬと思った。 まずは、熊と目をそらさない――それが正解だったかどうかは忘れた。 エレナは怖がっているだろうか?それとも、意外と「熊とか平気なんですよね~」なんて言って余裕をかましているのか。 しかし、後者は現実的ではない。
熊はゆっくりと俺の方へ近づいてくる。 殺されるかもしれない。両親との仲も解消できていないのに。
「アイウォントゥアイウォントゥアイウォントゥ、、、」 エレナは俺の後ろで何か発している。何を言っているのだ?アイウォントゥ?
「今から私の力で熊を退治するわ!」 エレナは言う。すると、熊がエレナの方に襲い掛かった。俺はヤバいと思った。エレナが死んでしまう。
「I want to wear clothes!」 エレナは魔法の言葉を発した。すると、熊は頭、腕、脚が切断され、死んだ。 エレナは英語を発していた気がするが、俺は英語が全く分からないのでスルーした。
「エレナ、、、お前、魔法使いなのか?」
「えぇ、私はこの池の魔女よ」 エレナは言った。俺は魔法使いと魔女の違いがわからなかった。
「魔女なのか!?」俺はとりあえず、言葉を発する。
「あなたはすでに死んでいるわ」
「え?」
「あなたは魔女になる資格があるわ」
「え?」俺は二度目の「え?」を発音した。
「さぁ、どうする?魔女になるか?それとも、あなたの魂を私が食べるか?どちらでも構わないわ」 エレナは言う。俺は考えた。魔女って、女の人しかなれないんじゃないの?、と。
「男の人でも魔女になれるのですか?」俺はなぜか、敬語で話す。
「なれます。多様性の時代です」
「では、魔男になるということですね?」
「はい。そうです(何を言っているのだ?)。一緒にこの池を守りましょう」 エレナは言う。そうか、そうなのか。俺が実家に帰って、パンツ一丁でいても何も見向きもされていないのは俺が死んでいたからだったのか。俺はこれから魔男になってエレナと一緒にここの池を守ろう。
「エレナ、、、俺と結婚してくれ!」俺は言う。
「別に構わないわ」
「これからは佐藤エレナじゃなくて、高橋エレナだ!」
「それは嫌!」