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謎解きの解答 The last secret

中学生の時描いていた漫画の完結編的なものです。読んでくれたら嬉しいです。

仕事に追われる毎日、そんな退屈な日々を送っていた。

「なぁ心、たまには息抜きしないか?」

「息抜き?でもやることまで結構あるし」

「いいじゃん、仕事ばっかりじゃ息が詰まる」

心はしばらく悩んだ末、凌とどこかへ旅行に行くことにした。

「どこ行く?」

「島根はどう?ちょうど行ってみたかったし、小説のイメージ作りにもなるかもだし」

「島根かぁ、良いと思う」

心は凌に賛成し、二人で島根県に行くことにした。


***


二人は島根県松江市に到着した。

心はまず喫茶店に行きたいと言ってはしゃいでいた。

「お前はしゃぎすぎだろ」

「はしゃいでなんぼだろ?」

「そういうもんか?」

たわいもない話をしていると、凌が腰を痛がり始めた。

「くぅ…、つー……」

「凌大丈夫か?とりあえずそこのベンチ座ろう」

そう言って心は凌を近くのベンチに連れて行き、座らせた。

すると凌はポーチから薬と水を取り出し、その薬を飲んだ。

「はぁ、いてて」

「凌腰どうした?」

「え?あぁいや、ちょっと前に階段で転けちゃって」

「まぁあんま無理すんなよ?」

心が凌に心配の言葉をかけていると、前からふらふらと歩いて来る女性がいた。二人は気になったのでその人に話しかけてみた。

「あの、どうかしました?」

「……」

「あの、僕たちにできることがあれば教えてください」

そう言うとその女性は、二人の顔を見てからそっと頷いた。

三人は近くの喫茶店で話を聞くことにした。

「あの、それで何かありましたか?」

凌がそう問うと女性はゆっくりと話し始めた。

「つい先日、私と妹で道を歩いている時。後ろから勢いよく走って来る車がいて、それで妹は持ってたぬいぐるみを落としたので拾いに行ったらその車にひかれて……」

二人はその話を聞いて心が傷んだ。誰だってそうだ、大切な人を失って立ち直れる方が珍しい。

「それで、犯人は?」

「まだ捕まってません。妹をひいたあとそのまま逃げてしまって……」

「あの、その車ってどんなのか覚えてますか?」

凌は犯人が乗っていた車両について聞いた。

「はい、確か黒のミニバンだったと思います」

「ナンバーは?」

「すいません、そこまでは……」

「そうですか……」

凌は腕を組んで考えているとふと窓の外を見た。するとその目線の先にはなんと相沢さんがいた。

「相沢さん?」

凌は急いで店の外へ出て相沢さんを呼び止めた。

「あれ、谷口くん?またまた奇遇だねぇ」

「えここで何してるんですか?」

「いや普通に観光してたんだけど?」

「まぁいいやそれより、ちょっと来てください」

「え?」

そう言って相沢さんは凌連れられるまま店に入った。

「あの、この方は?」

「相沢さん、まぁ一応警察官なんだけど。この人にも協力してもうと思って」

凌が話している中、相沢さんは凌の言った"一応警察官"という言葉に若干疑問の顔を浮かべていたがまぁ良しとした。

「まぁいいや、それで車の特徴教えてもらってもいいですか?」

相沢さんは女性にそう聞く。女性は頷き、車両の特徴を詳しく教えた。

「ありがとうございます、とりあえずこれで探してみます」

「ありがとうございます……」

相沢さんはそう言って喫茶店を出て行った。

「あの、他にも情報とかあれば教えてください。僕達も探します」

女性は涙を流し、深く頭を下げ感謝する。


***


それから数日が経ち、女性の情報提供のお陰で犯人は捕まったようだ。凌と心は安堵していた。

「犯人捕まってよかったねぇ」

「うん」

「よし、解決したことだし。名所行こう!」

心がそう言った。どうやら島根旅最終日なので島根の名所に行きたいようだ。

「いいよ、どこ行きたいの?」

「"摩天崖"ってとこに行ってみようと思って」

「いいじゃん、行ってみるか」

そう言って二人は摩天崖に行くことにした。到着してすぐ、心は腕を大きく広げて深く息を吸っていた。凌はそんな心を見て少し微笑んでいた。

すると心はその景色を写真に収め、満足そうな表情をしていた。


***


島根から帰ってきた後、二人は次作の打ち合わせをした。

心が話していると凌が「ふー」と息を吐きながら腰を押さえていた。

「腰大丈夫か?」

「あぁうん、大丈夫」

「そうか、まぁ無理せず」

心は凌にあまり無理をしないようにと言った。


***


とある日の交番。そこで働いている警察官、相沢康 巡査部長。

この日はこれといって事案がなかったのか彼は交番内でだらけていた。

「ちょっと相沢さん、またサボってるんですか?」

「いやサボってはないぞ?今日も事案がなくて平和だなぁって思ってるだけ」

「いや、結構常習的にサボってますよね?」

「……、それを言うなら君もだろ?今そうやって休んでるじゃないか」

「いやあなたよりは働いてると思いますけどね」

そんな平和な会話が続いていた。


***


打ち合わせはまだ続いており、心は途中でトイレに行っていた。心がいない間凌は窓の外を眺めていた、しかしその目には生気がなかった。そして心が戻ってきた時、ふと凌を見て心配した。

「おいどうした?」

「あぁ…大丈夫、最近ちょっと疲れてて」

「まぁ打ち合わせだったり、取材だったりで多忙だもんな」

「ちょっと、仮眠してくる」

そう言って寝室に向かおうとすると凌は急に腰を押さえて倒れそうになった。だが、近くに棚があったため倒れずに済んだ。

そして心は素早く駆け寄り、凌を支えた。

「おい大丈夫か?」

「いてて、とりあえずそこの薬取って」

心は凌が指差した場所にあった薬と水を渡すと、凌はその薬を飲んだ。

「ふぅ」

「病院にはちゃんと行ってるのか?」

「うん、先生も無理せず安静にって」

「そうか、てか腰痛で薬って飲むの?」

「あぁ、まぁ状況によってだね。痛みがひどい場合とか」

「へぇ、俺あんま腰痛とかやったことない知らなかったわ」

その後凌はしばらく休んだ。


***


[安曇野市立 三郷中学校]


その学校内にある中庭に凌が現れた。そしてひとつの花壇の前へ行き、しゃがんでそこに花を手向けた。凌はしばらくその花壇を見つめていた。そして立ち上がろうとした時、痛みが出たのか腰に手を当て痛がった。

「翔太……」

痛みが治ってきた時、凌はそう呟いた。


***


数日経ったある日。打ち合わせがあり、凌と会う約束をしていたが連絡がつかない。出版社にも連絡したが会社にも凌はいなかっ

た。凌と連絡がつかないので、心は凌の家に行ってみることにした。心は凌から貰っていた合鍵を使って部屋に入って見るが凌はどこにもいなかった。


***


その頃凌はどこかの海にいて、凌はどこかの海で、風に吹かれながらその景色を眺めていた。そしてしばらくすると凌はどこかへ向かった。到着した場所は病院だった。

[メイヨー・クリニック]

アメリカ合衆国ミネソタ州ロチェスター市に本部を置く総合病院。ロチェスターのほかフロリダ州ジャクソンビルとアリゾナ州スコッツデールに支部を置いている。また、「メイヨー・ヘルス・システム」として、ミネソタ州内のみならずアイオワ州、ウィスコンシン州でも病院や診療所を運営している。メイヨー・クリニックは常に全米で最も優れた病院のひとつに数えられている。

一体ここに何の用で訪れたのだろう……。

病院内を歩き、診察室に入った。扉を開けるとそこには女性の医師が居り、こちらに振り向いた。

「久しぶり、谷口くん」

そう言う彼女の胸の名札には"Shiori Morita"と書かれていた。

「久しぶり」

そこに居たのは高校時代の同級生、森田詩織だった。

「まさか医者になってるなんてね」

「私も、まさか谷口くんが患者として来るなんて思ってなかったよ」

そう言われ、凌は目線を少し下げた。

「それで、本当なんだね?」

「うん」

凌は下を向きながら言った。

「心臓の原発性悪性腫瘍」

そう言った。

心臓の悪性腫瘍がんは非常にまれで、発生率は全腫瘍の0.1%以下とされている。心臓腫瘍のうち、約70%は良性で、残りの約30%が悪性腫瘍。悪性腫瘍の中でも、原発性(心臓から発生するもの)はさらにまれで、転移性(他の臓器から心臓に転移したもの)が大部分を占める。

心臓の悪性腫瘍の摘出は、腫瘍の種類や進行度、患者の状態によって異なるが、一般的に困難とされている。特に、腫瘍が心臓の重要な血管や組織に浸潤している場合や、転移している場合は、完全な摘出が難しいことが多い。しかし、腫瘍の切除が可能な場合は、手術による摘出が第一選択となる。手術が難しい場合は、化学療法や放射線療法を検討することもある。

「いつわかったの?」

詩織はどういった経緯で病気がわかったのかを聞く。

「最初は胸の痛みだった。度々胸が痛くなって、同時に息切れもするようになったから病院に行った」

「そっか……、このこと柳澤くんには話したの?」

「いや、話してない」

「どうして?」

「言っても心配かけるだけだし、そういうの嫌なんだよね」

凌は心に心配させないために、病気のことはずっと黙っていた。これからも、言うことはないだろう。


***


その頃、心はいなくなった凌のことを探していた。

「あいつどこ行ったんだよ……」

そんな時、心の携帯に出版社の人から電話がかかってきた。

「もしもし?」

『先生見つかった?』

「いえ、どこにもいません。どうしましょう?」

『…とりあえずもう少し探してみて』

「はい」

そう言って電話を切った。

「はぁ、あいつどうしたんだろう。何かあったのかな?」

心は頭の中で様々な可能性を考えていた。そして、ある可能性が浮かんだ。

「そういえばあいつ、最近度々腰を痛がってたけど。」

心の脳裏にはあの腰を痛がっている凌の姿が浮かんだ。

「今考えてみれば少しおかしいよな……、ただの腰痛には見えなかったし。……よし」

心は何を決めたような表情でそう呟いた。


***


入院し病室へ移った凌。彼は病室の窓から外を眺めていると詩織が話しかけてきた。

「調子はどう?」

「変わりはない」

「そっか」

そんな会話をしていると、思い出したように詩織が凌に聞いた。

「そういえばどうしてうちの病院に来て、私の手術を受けようと思ったの?」

「海外でも医療技術が高いって聞いてたし。それに森田さんが今や海外では一番の腕だって知ったから」

「あぁ、そっか」

すると凌は少し間を空けてから続けて言った。

「それに、森田さんが今どうしてるのかずっと気になってたし」

そう言われた詩織の頬は少し赤くなっていた、まるで想い人を見るかのような目で。ただ、言った本人は気づいていないようだった。

「まぁとにかく、よろしくお願いします」

そう言い、深く頭を下げた。

「うん」


***


どこかのベンチに座る心、だがその目は涙ぐんでいた。どうやらあの後、もしやと思って近くの病院に行ったところ、以前凌が検査をしていたことがわかった。そして、担当した医師から凌が病気だということも聞いたようだ。

そしてその時、心の頭には過去の記憶が蘇ってきていた。


***


それは中学時代、親友の母から連絡があり家に向かった。

「……いや、なんですかこれ……」

そう聞く彼の目の前には、既に息を引き取った親友の姿があった。

「おい、お前なんで……。勝手に……」

言葉に詰まり、その時は泣くことしかできなった。


***


そして、いよいよオペ当日となった。

オペ室には何人もの人がいた。だがその中でも、圧倒的な存在がオペ室に入ってきた。

[森田詩織]海外では今やトップレベルの腕を持つ天才外科医。あの日、凌の言葉で生きる意味を見出した彼女は自分と同じような人を自分の手で救いたいと思い、日々努力を積んだ。毎日毎日、何時間も練習を重ねた。

「Now, let's start removing the malignant tumor of Ryo Taniguchi's heart」

「Yes」

「Scalpel」

そうしてオペは行われ、数時間にも及んだ。


***


1ヶ月が経ったある日、心はとある墓地に訪れていた。

花を手向けたお墓には彼の親友の名前が書かれていた。

息を吐き、その場を去ろうと立ち上がると……

「りょ、凌……?」

「よっ、心。やっぱここにいたか」

目の前には凌の姿があった。

「本当に凌か……?足ある……」

「いや僕だよ、ていうか足のない幽霊って古くないか?」

「凌ーーーー!!!!」

心はあまりの嬉しさに抱きついて叫んでいた。

すると心は凌の後ろにいた詩織の存在に気づいた。

「うわっ!え、森田さん?」

「久しぶり」

「久しぶり…、えなんで?」

「森田さんが僕の手術してくれたんだ。今森田さん、海外で医師として働いてるんだ」

「そうだったの?とりあえずありがとう」

そう言って頭を下げる。すると凌が言った。

「よし、じゃあ行こう」

「行くってどこに?」

「僕の退院祝いと森田が地元に帰ってきた祝いで、三人で地元巡り」

凌はそう提案した。その提案に心は頷き、すごく楽しみにしていた。


***


そうして三人は地元のいろんな場所へ行き、いろんな景色を見た。

そして電車で移動している時、凌は久しぶりに楽しんだからか詩織の肩にもたれかかって寝てしまった。

「おい凌?久々に楽しんだから疲れたのか」

そう言って心は詩織の方に視線を向けると彼女は顔を真っ赤にしていた。

「え?ど、どうしたの森田さん?顔真っ赤だけど?」

「だ、大丈夫…….」

本人はそう言っていたが、心から見たら全然大丈夫そうではなかった。だが心は凌を起こすのは申し訳ないと思い、そのままにするしかなかった。

そんな時、凌はとある夢を見た。それは海が一面に広がる海岸だった。風に吹かれている凌の横にはかつて亡くした親友の姿があった。

「悪い、まだそっち往けそうにないわ」

「いいよ、俺はもう逃げないから」

「人間って、思い通りにはいかないもんだな」

そう言葉を残すと、凌は夢から目覚めた。目覚めた直後の凌は少し寂しそうな表情をしていた。すると詩織は目が覚めた凌の顔を覗き、凌は寝ぼけた顔で詩織の顔を見た。

すると凌は突然詩織を抱き寄せた、まだ寝ぼけていたのと安心感があったから無意識にそうしたのだろう。だが詩織はそれどころではなく、さっきより顔を真っ赤にしていた。

「ちょ、ちょっと。柳澤くん……、助けてぇ……」

心は詩織に助けを求められたが手を貸さず、ニヤニヤしながら二人を暖かく見守っていた。

そんな毎日がこれからも続く。例えそれが苦しく、悲しいものでも、僕ら人間は生きていく。それぞれの想いと、命を紡いでいく。そうあってほしい、いや、そうありたい。

読んでいただきありがとうございます。

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