第15話 風呂上り
隼人がぼんやりと目を開けると、目の前に灰色のスウェット姿の美少女がいた。
白い肌に、お風呂上りのためか火照って艶めかしい。胸はかなり大きめで、服を押し上げているのが分かるほどに重量感が見て手取れた
(誰だ……)
「ほらぁ、長瀬さん起きて!」
「……美沙?」
「そうだよ。ほら、お風呂入るんでしょう?」
ゆさゆさとソファーで寝ていた隼人を美沙は起こした。彼女からは先日と違う匂いがした。鈴音とはまた違うが、隼人は嫌いではない、むしろ好ましい匂いに感じる。風呂上りのためか、それが強く匂いを感じ、流石にマズイと思い彼女と距離を取ろうとした。
「あ、あぁ…起こしてくれてサンキューな」
「どうしたの?珍しく動揺してるじゃん」
美沙は不思議そうに隼人を見て更に近づいた。
(急でビックリしたんだよ!起きたら巨乳でスタイルもいい女の子が目の前にいたら驚くの無理ないだろ!)
美沙は隼人が一瞬向けた視線を追って、一瞬顔を赤くした後に、苦笑して口を開いた。
「長瀬さんもやっぱり男性なんですね」
「あ、わ、悪い!本当に悪気は無かったんだ」
隼人は心臓がバクバクとしながら、言い訳を考えていた。
(クソ、どう言い訳しても上手く収まる気がしない。もう終わりか……)
「……別に本当に気にしていないよ?それに、これから一緒に暮らしていくんだから、それくらい一々気にしていたら身も持たないよ」
「あ、え、いや、確かにそうなんだが……」
「あぁ、もう!長瀬さん気にしすぎ!いいからお風呂入ってくる!お湯が勿体ないッ!!」
「は、はい!」
美沙は隼人のじれったい態度にイライラしたように、捲し立てるように早口で、まるで母親のような説教をした。
すると恐れから大人しく言うことを聞いた隼人は勢いよく立ち上がり急いで風呂場へと向かった。
(な、なんだ……美沙が一瞬般若のように見えた)
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お風呂に入りながら隼人は今後の生活を考える。
目下の目標としては期末試験である。流石に学費免除で大学に通っている隼人にとって、成績があまりにも悪いと来年度の学費免除されない恐れがあるので、重要なイベントであった。
「期末試験の勉強もしないとなぁ……。コツコツやってきたとはいえ、テストってなると緊張は拭えないよなぁ」
風呂場で独り言は響く。その反響する自身の声が、脳内に響くことで考えがまとまるので好きであった。
「そういや、美沙の下着って大丈夫なのか?」
隼人は彼女の服のことばかり考えていたが、下着はどうしているのだろうと。
「それとなく聞いてみるか……それに私服とかも必要だよなぁ…。あぁ出費が……」
美沙は類まれなる美少女であるし、本人も自覚していた。それならば、服にそれなりの拘りを持ってしかるべきだ。
「春休みからのバイト増やすしかないか。あぁ、そういえば鈴音からのバイトの紹介あったな……春休みから出来るか聞いてみるか」
隼人は元々ギリギリの生活をしていたので、多くの貯金を蓄えてはいない。彼の脳内は毎日の出費と今後発生するだろう出費の計算で一杯であった。
「生活費的にはなんとかなるかな。とりあえず休日に美沙をショッピングモールにでも連れ出して、服を何着か選んでもらうか……。女の子の服って高いのか?高いんだろうなぁ……」
隼人の趣味の一つでもある入浴剤を入れたお風呂。口まで湯船につかってブクブクとした。湯に浸かった時の彼の癖である。
「前途多難だが、美沙が前向きになってくれたんだ。俺も頑張るとしよう!」
湯船に浸かり暗い気持ちを切り替えて明日以降も頑張ろうと活力を漲らせて、風呂場を後にした。
長瀬隼人という男は、常に全力で根性精神なところがある漢なのだ。