戦士式教育の実態！ドラコとギータの協力
「おい、ギータ。幼竜の角は、生後三ヶ月から硬化が始まる。この時期に適切な手入れを怠ると、生涯、魔法制御に支障をきたす」
ドラコの謝罪を受け入れたギータは、彼と共に幼竜たちの保育にあたることになった。
しかし、そこには異文化という大きな壁が立ちはだかっていた。
ドラコは、幼竜の角を丁寧に磨きながら、ギータに説明する。
その手つきは、まるで熟練の職人のようだった。
幼竜の角は、繊細な模様が刻まれ、光を反射して輝いていた。
「へえ、そうなんですね。日本では、角の手入れよりも、心のケアを重視するんですけど……」
ギータは、戸惑いながらも、ドラコの言葉に耳を傾ける。
ドラコは、幼竜たちの種族特性や扱い方について、豊富な知識と経験を持っていた。
それは、ギータが前世で学んだ保育とは、全く異なるものだった。
「心のケア？ ふん、軟弱な。幼竜に必要なのは、己の力を制御し、戦士として生き抜くための術だ」
ドラコは、ギータの言葉を鼻で笑う。
しかし、ギータは、ドラコの言葉に反論した。
「そうでしょうか？ 確かに、力は必要です。でも、心が不安定なまま力を与えても、それは凶器にしかなりません。私は、この子たちが、自分の力を制御し、優しく、強く生きてほしいんです」
ギータの言葉に、ドラコは押し黙った。
彼は、ギータの言葉に、耳を傾けると決めたばかりなのだ。
「……貴様の言うことは難しい。心のケアなど、どのようにすればいいのか、わからない。俺にもそれを教えてくれないか。」
ドラコは、素直にギータに尋ねた。
ギータは、ドラコの言葉に、わずかな希望を感じた。
「もちろんです。でも、その前に、ドラコ先生に教えてほしいことがあります。私は、竜人族の方々をよく知らない。私たち人間族とは、重んじるものが違うように感じます。ドラコ先生、竜人族にとって、戦いはどのように営みにとって重要なのでしょうか？また、強くなるとはどういうことなのでしょうか？」
ギータは、ドラコに教えを請うた。
ドラコは、少し考えた後、話し始める。
ギータは、ドラコに教えを請うた。
「……わかった。話してやろう。我ら竜人族は、古より、戦いと共に生きてきた種族だ。強き者が生き残り、弱き者は淘汰される。それが、我らの掟だ。戦いは、生きるための手段であり、我らの文化そのものだ。そして、強くなるとは、己の力を制御し、敵を圧倒すること。それは、肉体的な強さだけでなく、精神的な強さ、魔法制御の熟練度、そして、戦術眼の高さも含む」
ドラコの言葉は、ギータの胸に、重く響いた。それは、単なる武力ではなく、生きるための覚悟を示すものだった。
「それら全てを兼ね備えた者こそ、真の戦士だ。だが……」
ドラコは、言葉を区切り、少しばかり躊躇うように、ギータを見つめた。
「真の戦士になれなかった者は、一族から、少々、浮いた存在になる。まぁ、人間で言うところの、はみ出し者、みたいなもんだな。
生きる意味を失っちまう奴もいるんだ。男なら誰も嫁なんて来てくれねぇ。だから、幼い頃から、訓練を積むんだ」
ドラコの言葉は、ギータに、竜人族の生き様を、痛烈に突きつけた。
それは、ギータが想像もしていなかった、彼らの価値観を反映した社会構造だった。
「……なるほど。ドラコ先生、ありがとうございます。少し、理解できました」
ギータは、ドラコの言葉に、真剣な表情で頷いた。
「では、私も日本式の保育を紹介させてください。遊びを通して、子どもたちの心を育む方法を」
ギータは、ドラコに提案した。ドラコは、少し考えた後、頷いた。
「……わかった。貴様の言う、遊びとやらを、試してみよう」
こうして、ギータとドラコの、異文化交流が始まった。
ギータは、ドラコに、日本の童謡や手遊び、絵本の読み聞かせなどを教えた。
ドラコは、最初は戸惑っていたが、次第に、子どもたちの笑顔に、心を動かされていった。
「……面白い。この遊びとやら、幼竜たちの心を、穏やかにする効果があるのかもしれない。だが、ギータ。この幼竜たちの鱗は、生後半年から硬度を増す。この時期に、この様に穏やかに過ごし適切な訓練を怠ると、鱗が丸くならず仲間を傷つける危険性がある」
ドラコは、幼竜の鱗を布で磨きながら、ギータに言った。ギータは、ドラコの言葉に、真剣な表情で頷いた。
「わかりました。ドラコ先生、訓練の方法を教えてください」
ギータは、ドラコに教えを請うた。
ドラコは、ギータに、幼竜たちの鱗の研磨方法や、模擬戦闘の訓練方法などを教えた。
ギータは、ドラコの指導を受けながら、幼竜たちの力を制御することの難しさを痛感した。
二人の交流を通して、幼竜たちの様子も、少しずつ変化していった。
彼らは、ドラコの厳しい訓練にも、ギータの優しい遊びにも、楽しそうに取り組むようになった。
そんなある日、ギータは、前世でよく見ていたテレビ番組の話を、ドラコにした。
「ドラコ先生、この世界には、娯楽はないんですか？」
「娯楽？ ふん、くだらん。戦士に娯楽は不要だ」
ドラコは、ギータの言葉を鼻で笑う。しかし、ギータは、諦めずに続けた。
「でも、面白い番組があるんですよ。『はじめてのおつかい』って言うんですけど……」
ギータは、番組の内容を、ドラコに説明した。
それは、幼い子どもたちが、親から頼まれた買い物を、一人で達成するという、ドキュメンタリー番組だった。
「……なるほど。幼竜たちの社会性を育むには、良い訓練になるのかもしれない。
だが、ギータ。この企画を実行するには、いくつか問題がある。幼竜たちは、まだ魔法制御が未熟だ。街中で魔法を暴発させたら、大惨事になるかもしれない」
ドラコは、ギータの企画に、慎重な姿勢を示した。
ギータは、ドラコの言葉に、少し考えた後、提案した。
「では、園の敷地内で、模擬的な街を作ってはどうでしょうか？ 私が、前世で使っていた簡単に作れるおもちゃや、廃材などを利用すれば、それほど費用もかからないと思います」
ギータの提案に、ドラコは、目を輝かせた。
「……面白い。その手があったか。よし、ギータ。俺も協力しよう。この『はじめてのおつかい』とやら、幼竜たちの成長に、きっと役立つはずだ」
ドラコの言葉に、ギータは、笑顔で頷いた。
「はい！ ぜひ、やりましょう！」
こうして、ギータとドラコと子どもたちの、新たな挑戦が始まったのである。
