表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

ギータはじめてのしつけ!暴走幼竜児たちをまとめろ!

「先生、たすけてぇえええ!」


 甲高い叫び声が響く。

ギータが目を開けると、そこは昨日の戦場と化した保育室。


いや、正確には、炎を吐く幼竜たちによってさらに悪化した、「半壊保育室」と言うべきだろうか。


 昨日の騒動で、幼竜たちはギータを完全に「ナメきって」いた。

テーブルの上で火を噴きながら走り回るリオちゃん、泣きながら竜巻を起こすギャンギャンちゃん、地面を溶かしながら寝ぼけるモグモグちゃん……。


「いってぇ……。お、お前ら、ちょっと落ち着け!」


 ギータはすぐに状況を把握しようとするが、その前に足元を駆け回る幼竜たちが衝突し、見事に転倒した。


「まずいな……このままだと保育園ごと燃えちまうぞ」

 ギータは急いで立ち上がり、声を張り上げた。

「おまえら、静かにしろーーーっ!」



 一瞬、ピタリと動きが止まる。

だが、次の瞬間には「きゃははは!」「先生、おこったー!」と、まるで遊びの一環のように大はしゃぎする幼竜たち。



 これは、完全になめられている。



「……やっぱり、こうなるか」

 ギータは深呼吸し、冷静に考えを巡らせる。

前世の保育士経験から、子どもたちが興奮状態にあるときは、ただ怒鳴るだけでは逆効果だと知っていた。


「もしかしたら…人間の子よりももっと力が有り余ってるのかも」



 ギータは、幼竜たちを観察し、彼らの共通点を探した。

「……彼らは、強いものに憧れ、力を求め、本能的に『戦い』を好む」

 ギータは、幼竜たちに声をかけた。



 ——でも…戦いだけしてきたのがこの半壊教室の惨状を生んでいる。子どもたちに必要なのは思いやりの気持ちだ。ギータは、そう確信した。





 ギータの試行錯誤は、まだまだ続く。

 翌日、ギータは、幼竜たちに新しい遊びを提案した。


「みんな、今日は『愛と勇気の竜』という物語を聞かせてあげようと思うんだ」

 ギータは、竜人族向けにアレンジした日本で有名なパンのヒーロー物語を、情熱的に語り始めた。



「むかしむかし、まだ世界がドラゴンフルーツみたいにゴツゴツしていた時代。

一匹の小さなドラパンがいました。


ドラパンは、他のドラちゃんたちのように、火を吹くのも、空を飛ぶのも、魔法を使うのも苦手でした。でも、ドラパンには、誰よりも優しい心と、絶対に諦めない勇気があったのです」


 幼竜たちは、目をキラキラと輝かせ、ギータの話に聞き入った。


「ある日、バイキン竜が、村のドラゴンフルーツを独り占めしようとしました。村のドラちゃんたちは、怖くて逃げ出してしまいましたが、ドラパンだけは、立ち上がりました。『僕がみんなを守るんだ!』と、ドラパンは、バイキン竜に立ち向かいました」


「ドラパンは、自分の力を過信することなく、村のドラちゃんたちに声をかけました。『みんな、力を合わせて戦おう!』と。そして、みんなで知恵と勇気を振り絞り、必殺技『ドラパンパンチ』を繰り出し、ついにバイキン竜をやっつけたのです」


「村のドラちゃんたちは、ドラパンに感謝し、みんなで美味しいドラゴンフルーツを食べました。ドラパンは、みんなの笑顔を見て、嬉しくなりました。そして、ドラパンは、みんなから愛される、正義のヒーローになったのです」



「おしまい」 


物語が終わると、幼竜たちは興奮した様子でギータを見つめた。


「先生、面白かった!」

「俺も、あんな強い竜になりたい!」

「みんなで協力するって、かっこいいねえ!」



こうして、ギータは、異世界幼竜との対話を通して、彼らの心に響くものを探していくのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ