ギータはじめてのしつけ!暴走幼竜児たちをまとめろ!
「先生、たすけてぇえええ!」
甲高い叫び声が響く。
ギータが目を開けると、そこは昨日の戦場と化した保育室。
いや、正確には、炎を吐く幼竜たちによってさらに悪化した、「半壊保育室」と言うべきだろうか。
昨日の騒動で、幼竜たちはギータを完全に「ナメきって」いた。
テーブルの上で火を噴きながら走り回るリオちゃん、泣きながら竜巻を起こすギャンギャンちゃん、地面を溶かしながら寝ぼけるモグモグちゃん……。
「いってぇ……。お、お前ら、ちょっと落ち着け!」
ギータはすぐに状況を把握しようとするが、その前に足元を駆け回る幼竜たちが衝突し、見事に転倒した。
「まずいな……このままだと保育園ごと燃えちまうぞ」
ギータは急いで立ち上がり、声を張り上げた。
「おまえら、静かにしろーーーっ!」
一瞬、ピタリと動きが止まる。
だが、次の瞬間には「きゃははは!」「先生、おこったー!」と、まるで遊びの一環のように大はしゃぎする幼竜たち。
これは、完全になめられている。
「……やっぱり、こうなるか」
ギータは深呼吸し、冷静に考えを巡らせる。
前世の保育士経験から、子どもたちが興奮状態にあるときは、ただ怒鳴るだけでは逆効果だと知っていた。
「もしかしたら…人間の子よりももっと力が有り余ってるのかも」
ギータは、幼竜たちを観察し、彼らの共通点を探した。
「……彼らは、強いものに憧れ、力を求め、本能的に『戦い』を好む」
ギータは、幼竜たちに声をかけた。
——でも…戦いだけしてきたのがこの半壊教室の惨状を生んでいる。子どもたちに必要なのは思いやりの気持ちだ。ギータは、そう確信した。
ギータの試行錯誤は、まだまだ続く。
翌日、ギータは、幼竜たちに新しい遊びを提案した。
「みんな、今日は『愛と勇気の竜』という物語を聞かせてあげようと思うんだ」
ギータは、竜人族向けにアレンジした日本で有名なパンのヒーロー物語を、情熱的に語り始めた。
「むかしむかし、まだ世界がドラゴンフルーツみたいにゴツゴツしていた時代。
一匹の小さなドラパンがいました。
ドラパンは、他のドラちゃんたちのように、火を吹くのも、空を飛ぶのも、魔法を使うのも苦手でした。でも、ドラパンには、誰よりも優しい心と、絶対に諦めない勇気があったのです」
幼竜たちは、目をキラキラと輝かせ、ギータの話に聞き入った。
「ある日、バイキン竜が、村のドラゴンフルーツを独り占めしようとしました。村のドラちゃんたちは、怖くて逃げ出してしまいましたが、ドラパンだけは、立ち上がりました。『僕がみんなを守るんだ!』と、ドラパンは、バイキン竜に立ち向かいました」
「ドラパンは、自分の力を過信することなく、村のドラちゃんたちに声をかけました。『みんな、力を合わせて戦おう!』と。そして、みんなで知恵と勇気を振り絞り、必殺技『ドラパンパンチ』を繰り出し、ついにバイキン竜をやっつけたのです」
「村のドラちゃんたちは、ドラパンに感謝し、みんなで美味しいドラゴンフルーツを食べました。ドラパンは、みんなの笑顔を見て、嬉しくなりました。そして、ドラパンは、みんなから愛される、正義のヒーローになったのです」
「おしまい」
物語が終わると、幼竜たちは興奮した様子でギータを見つめた。
「先生、面白かった!」
「俺も、あんな強い竜になりたい!」
「みんなで協力するって、かっこいいねえ!」
こうして、ギータは、異世界幼竜との対話を通して、彼らの心に響くものを探していくのだった。