ここは戦場か?!学級崩壊クラス「どらごん組」
ドガーン!ズギューン!!!バリバリバリ!
中から、まるで爆弾でも爆発したかのような轟音が響き、黒煙がモクモクと立ち上る。
小さな影が、まるで戦闘機のように飛び交い、叫び声がこだまする。
「肉よこせーっ!」
「俺が一番強いんだぞーっ!」
「うわあああん、痛いよぉーっ!」
ギータが目を凝らすと、そこには信じられない光景が広がっていた。
角が生え、翼をバタバタさせながら、互いに噛みつき、火を噴き、魔法をぶつけ合う、幼い竜人たち。
体長は1メートルほどだが、そのパワーは尋常じゃない。
石のテーブルが一瞬で粉砕され、床には巨大な穴が開いている。
「な、なんだこれ!? 子ども!? いや、幼竜!? さっき保育園って言ってなかったか!?」
呆然とするギータの横を、別の竜人族が悠々と通り過ぎた。
筋肉が鎧のように盛り上がり、肩には巨大な斧を担いでいる。
「おい、新入り。ぼーっと突っ立ってんなよ。あいつらを黙らせろ」
「え、俺!? ていうか、あれ何!? 何でこんなカオスなの!?」
男はニヤリと笑い、言った。
「ここは『どらごん組』、竜人族の保育園だ。俺はドラコ。お前とおんなじ年長の担任だ。幼竜どもを、最強の戦士に育てるための聖なる場所。ここが最強になるための教育施設だ!」
教育施設とは言っても、ここは保育園としても成り立っていないように見えた。
床は魔法で溶けて穴だらけ、壁は火球で黒焦げ、テーブルは粉々に砕け散り、そこら中に幼竜たちの爪痕が残っている。
まるで戦場跡のようだ。
子どもたちは、おもちゃの代わりに火球や魔法を投げ合い、泣き叫びながら互いに噛みついている。
先生らしき竜人族は、それを放置して腕組みをしているだけ。
とてもじゃないが、教育と呼べるような光景ではなかった。
「教育!? これはただの無法地帯だろ!?」
ギータのツッコミも虚しく、男は豪快に笑いながら去っていく。
その時、一匹の幼竜がギータに気づいた。丸い目でこちらを見上げ、ヨチヨチと近づいてくる。
「ねえ、お前誰? 新しい先生?」
「え、あ、うん、そうだよ! ギータ先生だよ、よろしくね!」
ギータは、前世の癖で、つい優しく微笑みかけた。だが、次の瞬間――
「じゃあ、俺と戦えーっ!」
幼竜が、その小さな口から、まるで火炎放射器のような火球を吐き出した。
「うわっ!?」
慌てて横に飛び退くギータ。
火球は、ギータがさっきまで立っていた壁に命中し、黒焦げの跡を残す。
(うわあああ?!なんだこの園児、問題児すぎる!)
すると、別の幼竜が駆け寄ってきた。
こいつは、泣きじゃくっていて、涙が滝のように流れ出ている。たどたどしい言葉遣いでお話してくれた。
「うわああん、ギャンギャンちゃんが泣かされたよぉーっ!」
「え、君がギャンギャンちゃん?」
「違うよぉ! あそこにいるよぉ!」
指さす先には、さらに小さな幼竜がいた。
こいつは、泣きすぎて鼻水まで垂らし、周囲に小さな竜巻を巻き起こしている。
「うそだろ!? 泣くだけで魔法が暴走してる!? どうなってんだ、この園、この世界!」