転生!保育園に連れて行かれる?!
ギータは目を覚ました。
目の前には、どこまでも続くエメラルドグリーンの草原。
風に揺れる草の匂い、遠くで鳴く異世界の鳥のさえずり、そして、頭上に広がる見たこともないほど澄み切った青空。
「……え?」
最後に覚えているのは、ブラック企業の保育園での過酷な労働。
ギータはギータという名前でなかったことは覚えている。
しかし、それ以上思い出そうとすると頭が痛くなる。
頭に残っているのは、園長からの罵声、終わりの見えない残業、そして疲労困憊で意識を失った瞬間。
「まさか……死んだのか、俺?」
ギータはゆっくりと体を起こし、自分の手を見下ろした。そして、息をのんだ。
――黒くて、まるで岩のように硬そうな鱗。
――鋭く、獲物を引き裂くための刃のような爪。
――そして、地面を這う、太くて力強い尻尾……。
「な、なんだこれ!? 俺、ドラゴンニンゲンになってる!?」
慌てて立ち上がり、周囲を見回す。そこは、まるでRPGの世界のような、広大な異世界だった。
そして、自分の体は、見るからに強そうな竜人の姿に変わっている。
背中には、まだ小さく頼りない翼が生えていた。
近くの水たまりに映った顔は、前世の面影を残しつつも、筋肉質で、強面の兄貴系だ。
「うわっ、前世は虫も殺さないような顔だったのに、こんなイカつい姿に!? でも、中身は変わらないか……だよね?」
自分を励ますように呟いた瞬間、鈴の鳴るような声が耳に飛び込んできた。
「あなたが、新しい保育士さんですか?」
振り向くと、そこには銀色の髪を持つ、まるで妖精のように美しい女性が立っていた。
おっとりとした雰囲気で、優しそうな笑顔を浮かべている。
「園長の、ルーナ。これからよろしくね。」
「え、あ、はい! 俺はギータ、よろしく……って、ちょっと待って! 何!? 保育士!?」
ルーナは、その天使のような笑顔を崩さずに続けた。
「ここは『異世界保育園どらごん組』。あなたは、今日から幼竜たちの先生です!」
「異世界!? 幼竜!? 先生!? ちょっと待ってくれ、俺の頭が追いつかないんだが!?」
ギータの頭がパンク寸前になる中、ルーナは草原の先を指さした。
そこには、まるで古代の要塞のような、巨大な石造りの建物がそびえ立っている。
「さあ、行きましょう!住むところも準備してあるわ! 子どもたちが、首を長くして待ってますよ!」
「待ってくれ、状況を整理させてくれ! ていうか、子どもって……」
ルーナに腕を掴まれ、半ば引きずられるように建物に到着した瞬間、ギータは異変に気づいた。
保育士としての生活は想像です。
かなり実際とは違うかもしれませんが、竜人族、ということでお目こぼしください。