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イベントに参加してみましょう②

首を傾げる3人に対し、キャンディはちょっと困ったように答えたが


「お前、日本人ではないな」


その時、俺は確信を持って言ってやった。


「どうして急に分かったの?」


断言されたキャンディは驚いていたが、その理由は明白だ。


「四次元ポケットは、日本人なら全員が知っているし意味も分かる。いいか、もれなく全員だ」


現に、ミドリコ、ヒロカ、アカネの頭の中には例外なく青いタヌキが思い浮かんでいることだろう。


「確かに、四次元ポケットって名前だと想像しやすいね」

「こう、他の場所から道具を取り出すかんじでしょ」

「どこかの空間に物をストックできるってこと?」


「ほ、本当に伝わってる……!」


うんうんと頷き合う俺達にキャンディは衝撃を受けている様子だった。


「今は必要な武器やアイテムは持ち歩くしかないけど、持ち物が増えるに従って選別が難しくなってくるし、単純に荷物が多くなる」


能力として習得できる魔法と違い、武器、防具、アイテム類は自分の体が物理的に持てる分しか運べない。


そこで多くのプレーヤーが喉から手が出るほど欲しがるのが、この四次元ポケット機能だ。


自分の拠点や貸倉庫に空間を繋げておけば、必要な時に好きな物をすぐ取り出せる。


今トップランカーと呼ばれるプレーヤーは多分全員が備えており、その分ポイント以外でも比較的入手しやすいものではある。


俺もこの四次元ポケットを初めて使った時はあまりの便利さに嬉し泣きしたくなったくらいだった。


「もう一つの、ネタバレ絶許システムってのは?」

「あー、これはお姉ちゃん達には関係ないと思うけど」


アカネの問いにちょっと考えてからキャンディは口を開く。


「なんか映画とかアニメとか、『記憶を消してもう一度最初から見たい!』って思うことない?」


説明として斬新なアプローチだなと心の中で思ったが、俺は黙っていた。


「あるある! めっちゃ面白い作品とか、謎解きがすごいやつとか」


けれど、納得するヒロカの様子を見るにやっぱり伝わっているらしい。


もしかすると、キャンディは本当に若い女子だったりするのだろうか……?


「クダラノでも、そういうことを思う人がいたんだ」

「どういうこと?」


3人が理解できない気持ちはよく分かる。


俺も、最初に本人からその理屈を聞いた時は何度も聞き返してしまった。


「まあ、この機能を作るきっかけになったのが、今ランク4位のキラっていうプレーヤーなんだけど」


ボソボソと説明するキャンディの表情も心無しか苦笑い。


「めっちゃ強くてイケメンですごい人なんだけど、ちょっと偏屈へんくつというか変人で」


うん。全くもって、その通りだ。


「他の人が先に倒したモンスターの弱点とか、エリアの攻略情報を教えられるのが大っ嫌いなんだって」

「え、ネタバレ絶許ってそういう?」


そう。キラの全部自分でクリアしないと気が済まないゲーマー気質が長じ、直接運営にかけあって作らせたのがこのヘンテコなシステムなのである。


「つまり、この機能をオンにしてログインすると、その間だけクダラノに関する記憶は一切消去されるらしい」


横から解説の助けで口を挟んだものの、こればっかりは俺も使ったことがないので本当に聞いた話になってしまう。


早い話が、クダラノ内にいる間は真っさらな状態でプレイが出来るという代物しろものだ。


「ログアウトすれば、また思い出すってことね」

「ああ。ログイン中に以前のことを教えられたとしても、そのことは思い出せない仕様らしい」


クダラノは精神を転送するゲーム。


その一部だけをいじくるのは理論上は可能かもしれないが、どういう原理でこんなことになっているのか? ……そんな不安や批判も確かにあった。


とはいえログアウトすれば記憶は元通りな訳だし、今のところ特に問題は起きていないようではある。


というか、このシステムを使う奴なんてキラ以外にいるのだろうか。


「まあ。つまりは、そういう色んなものと交換できるのがこのポイントってことなんだ」


散らかっていてしまっていた話題を無理矢理キャンディが元に戻した。


「そうそう、イベントが何かって話だったんだよね」

「なんか面白そうだね」


アカネの声に応えるようにミドリコがこちらへ視線を向けてくる。


「……じゃあ、皆で参加してみるか?」


何故 俺を見る? と思ったが、この流れではこう言うよりない。


とはいえ実際ポイントを獲得するのは難しいだろうが、負けてもペナルティがある訳でもない。


たまには こういう場に出場してみるのも楽しいかもしれない。


「あ、ごめん。私達はちょっと無理かな」


けれど、そのやり取りを見ていたヒロカが横からそんなことを言った。


「え、何かあるの?」


俺と同じように驚いたアカネが意外そうな声をあげる。

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