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To build a new house


 「とりあえずは図面からだな」


家が建つ! と希望に目を輝かせたのは良いが、現実はそうそう楽には運ばない。


無駄に現実社会に忠実に作られているクダラノの世界では、それは尚のことだ。


「大まかでいいから部屋数とか位置関係なんか言ってくれれば、こっちで図に起こしてやるぞ」


トリアエズの町の大衆食堂で俺達4人は、アカネがなついている大工のじいさんを囲んで朝食をとっていた。


土地を得たことに満足して一度ログアウトしたものの、興奮が収まらずヒロカの部屋で数時間の仮眠をとったのち またすぐクダラノに戻ってきたのだった。


しかし ちょっと冷静になってみれば、家を建てるとは何から始めてどうすれば良いのだろう。


アマテラスの「天空の城塞」を作った時は全て魔法と依頼で済ませてしまったので気にしてなかったが、一から作るとなるとただの高校生である俺達には荷が重すぎる。


そこで専門家を頼ることにした。


すぐにじいさんに会うことが出来たのは、いつの間にかアカネが連絡先を交換していたからだ。


大工のじいさんと呼んでいるが、現実での彼はゼネコンに務める30代のスペイン人女性だという。


写真を見させてもらったが、普通に美人なお姉さんだった。

これだから仮想の世界は信用がならない……。


 「あと、一応は地盤とかを先に見ておいたほうがいいな」


じいさんはさっきから世界樹周辺の写真を眺めながらこうしてド素人の俺達にも分かりやすく色々と教えてくれる。


「色々とありがとうございます」


改めてお礼を言うと、その白い髭の下の口元は楽し気に笑った。


「いいってことよ。家を建てる手伝いが趣味みたいなもんでな」


と話す通り、大工になりたかった幼い頃の夢を叶えるため彼(彼女)はクダラノの中で特に初心者の家作りに手を貸しているのだという。


「じゃあ、ここに階段を作れる?」

「あとキッチンは広くしたいの」


じいさんと一緒に紙面に理想を書き出してゆくアカネとヒロカは真剣で、そして とても楽しそうだった。


「ま、そういうことだから」


その様子を微笑ましく見守っていた俺は、ふいに顔を上げたじいさんに言われて首を捻った。


「何が?」

「あんたら2人は他の用事があるんだろ」


その視線は、俺と隣のミドリコへと向けられている。


「家のことは興味なさそうだもんねえ」


ヒロカにもからかい半分で言われてしまった。


「そんなことないよ」


ミドリコは口を尖らせるが、家について彼女がアカネとヒロカに任せきりにしているのは確か。


「アタルとミドリコは普通にゲームしたいんでしょ、行ってきなよ」


口では色々と言いつつ、お互いの性格はよく分かっているのだろう。

笑ったアカネがそう言ってくれた。


「いいのか?」

「こっちのことは任せておいてよ」


念のため聞いてみたが、俺に対してはシッシッと手で追い払うような仕草をしてきやがる。


「……まあ、それじゃあ」


チラリとこちらを見たミドリコと視線をあわせた。


今までずっと4人一緒だったから別行動というのはヘンな感じがしたけれど、別にこれが今生の別れという訳でもない。


「俺達はレベル1エリアにでも行って来る」


皆を見回しながら立ち上がった。


レベル1エリアは、このトリアエズの町のあるレベル0エリアのすぐ隣。


初心者が操作の練習をするにはちょうど良いし、すぐにここまで戻って来られる。


「いい? 夕ご飯までには帰って来ること」


ヒロカのセリフは、どこまで本気なのか分からない。


「ああ、いってくる」


とにかく そんな訳で、俺はミドリコを連れてレベル1エリアへと出発した。

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