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はじまりの海③

『あれは、実際の君達の能力だ。』


あっけなく告げられた言葉に、誰しもの頭の上にクエスチョンマークが浮かび上がった気がする。


「は? なに言ってんだ」

「魔法はゲームの中でしか使えないだろ」


そう口々に不信の声があがるのも当然。


どんなにアニメやゲームが好きな奴だって、それが現実と違うことはきちんと理解している。


アニメの必殺技や変身呪文をこっそりと試すのはどんなに頑張っても小学生までである。


『こう言っても、君達には理解できないだろうね。』


そんな俺を馬鹿にするかのように、開発者は笑った。


いや、どう考えたって人間が魔法を使うなんて不可能だろう。


『どうして鳥は飛べるのか。』


だが、心の中で言い返した俺に、少年は謎かけでもするように問いかける。


「急になんだ?」

「そんなの鳥だからに決まってるだろ」


近くのプレーヤーが口にした文句に俺も同意だった。


『それは、当然 飛べると思っているからだ。』


しかし、なおも当然のように開発者はそんなことを言う。


まるで寺の和尚が子供達へ向けて説法でもするように。


『逆に、君達人間は他の動物には不可能なことも簡単に出来る。それは何故か。』


……それは、そういうものだから。


と真面目に考えてしまったのは負けだろうか。


『それが当然と信じて疑わないからだ。ほとんどの人間にとって代々親から子へと受け継がれてきた“常識”だから。では、それを魔法に置き換えたならば?』


そう人差し指をかかげた開発者のセリフに、一瞬納得してしまいそうになって頭を慌てて振った。


そんな訳があるはずがない。


「いや、無理だ」

「出来ないことだから受け継がれてないんだろ」


キャンディとボーテさんが不服そうに反論するように、魔法と鳥が空を飛ぶ話は全然同じではない。


もしや、この開発者という奴は怪しい宗教の教祖とかじゃないだろうな……と思い始めていた俺だったが。


『私が思うに、この地球上の生命体は全て一つの場所、一つの命から派生している。とてつもない確率の偶然から生まれた生命が、今のヒトや動物、鳥、昆虫、微生物などに分かれていった。

それならば、人が空を飛ぶことも、切れた尻尾がえてくることも、誰に教わったわけでないのに地球の反対側へ辿り着けることも、全て可能ということになる。』


やけに飛躍した話に、黙って耳を傾けてしまっていた。


『これだけ世界中に魔法や呪術という同じような現象が散見されるのには理由がある。これは私の推測になってしまうが、君達の遠い遠い祖先達は魔法またはそれに類似する何かを操れたのだろう。しかし、いつしか理性や科学に淘汰とうたされ、その存在だけが語り継がれるようになった。

そう考えると、君達が信じさえすれば魔法や それに似た力が使えたとしても、不思議はなくないだろうか。』


そんな言葉に、つい俺は自分の手のひらをじっと見つめる。


「そんな、馬鹿な」

「でも……確かに第六感とか、そういうのはあるよな」


他の人々の反応も半々といったところか。


最初はまったく信じていなかった話を疑うところまで持ってこれたのだから、多分 開発者の思うつぼなのだろう。


『まあ、この話は余談だった。信じるかどうかは君達次第だ。

そういう訳で、惑星Zのモノ達は、クダラノのモンスターという器に転送されるようにしてある。ここに残ったプレイヤーは、今まで通りモンスターを倒してくれればいい。それが、侵略者から地球を救う直接的な行動になる。

ただし、君達と同様に惑星Zにも弱いモノと強いモノがいる。モンスターと戦う時と同じように、自分と敵のレベルを見誤らないよう気をつけて欲しい。

そして、必ず どこかに彼等を束ねる侵略軍の“本体”がいるはずだ。』


本体。


急に核心に戻ってきた話題に上手くついてゆけない俺を置き去りに、開発者は淡々と話を続けた。


『その本体を叩けば、神経系統で繋がっている他のモノ達も恐らく無効化される。しかし、当然ながら本体は部下達によって厳重に守られていると予想される。いわゆるボス戦だ。君達の健闘を祈る。』


そこまで話し終えた顔が急に歪んだ。


彼を映し出していた画面が乱れたのだ。


『これは私の不徳ふとくの致すところだが。惑星Zは、私が地球側へ寝返ったことを どうやら気づいていたらしい。予定が300年も早まったことを知らせもせず突然侵攻してきたのが その証拠だ。

ついては裏切り者の私を探し出し、地球から追い出すか、どこかに幽閉する算段だろう。言い忘れていたが、惑星Zでは仲間と戦えないよう生まれた時にインプットされている。君達のように同じ種族で殺し合って絶滅の危機なんて事態にならないようにね。

そんな訳で私は消されることはないが、すぐに身動きが出来なくなるだろう。それで、こうして緊急で記録を残させてもらっている。』

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