表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フタシカなまま、ぼくたちは  作者: ばやし せいず
第3章 佐藤蒼紀
46/76

3-28 そんなわけあるかああああっ!!

――順位のことで、ココちゃんは私のことなにか言ってたかな?


「え? えっと……」


 練習室で野沢(こころ)と交わした会話を愛華あいかに喋れば、大目玉をくらいそうだ。


「うう~、やっぱりなにか言ってたんだ。愛華とは友達やめる! とか言ってたんでしょ?」

「言ってない言ってない。そんなことで友達をやめる奴なんかいないだろ」

「……『成績がいいからって調子乗るな』って、よく言われてたんだもん」

「中学で?」


 彼女は頷いた。


「ココちゃんと仲良くなれると思ったのに、また嫌われたらどうしよう……」

「嫌いだなんて言ってなかったってば。あ、そうだ。愛華から貰ったミサンガ、ちゃんと脚につけてたよ。この前、心に見せてもらった」


 そして彼女を真似し、俺もミサンガを足首に結び直した。結び目がかたく、手首から外すのに三十分も掛かってしまった。


「コ、ココちゃんの脚を……」


 瞬きを繰り返し、彼女はぽっと顔を赤らめる。


「そっかそっか。やっぱり噂は本当だったんだね。いつの間にか下の名前で呼んでるし……」

「? 噂って?」

「ソーくんとココちゃん、つ、つ、つつつ」

「つ?」

「つき合ってるんでしょ!?」

「そんなわけあるかああああっ!!」

「ええっ、違うの!? ソーくんの部屋にココちゃんがよく出入りしてたって聞いたけど……」


 眩暈めまいがしてきた。いつ目撃されたのだろう。壁に耳あり障子に目ありだ。


「ココちゃんはソーくんと打ち解けてるし、やっぱりあの二人はつき合ってるんだねーってみんなで話してたんだ」

「……みんなって、クラスのみんな?」

「ううん。他のクラスの子も」

「他のクラスも!?」

「ココちゃん、美人だから目立つでしょ? だからなにかと話題になるんだ。二人を温かく見守ろうねってみんなで約束し合ったんだけど、でも誤解だったんだね。ごめんなさい」


 愛華は顔の前で手を合わせる。


「むしろ堂々と冷やかしてくれたほうがよかった。はっきり否定できたのに」


 たとえば、寮のスタッフでもありカウンセラーでもある山添六実やまぞえむつみのように。


「ソーくんってば。高校生にもなって付き合った付き合わないで冷やかす人なんているわけないじゃない。……ハッ! い、今余計な事言ったかな!?」

「いや、全く気にならないけど……」


 慌てふためく彼女をなだめる。こうやって必要以上に気を遣うのも過去に辛い目にあったからなのだろう。

 合点が行ったと同時に不憫に思えた。


「……本当につき合ってないの?」

「つき合ってない。本題に戻るけど、心は愛華のことなにも言ってなかったよ」


 成績に嫉妬したとは言っていたが、それは彼女自身の問題だ。人間性については触れていなかった。


 喋っているうちにA棟まで到着した。女子専用フロアである四階に続く階段の前で、彼女は振り返る。


「次の練習は明後日だね。またよろしくお願いします」

「もっと練習してくるよ。……有志発表、愛華にとって絶対いい機会になると思う」

「……うん、ありがとう!」


 彼女は笑顔で手を振り、階段を上った。再びハミングが聞こえてくる。

 足を止め、鼻歌が聞こえなくなるまで耳を傾けた。


 この歌に一番に癒されていたのは誰だろう。


 そんなことを考えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ