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フタシカなまま、ぼくたちは  作者: ばやし せいず
第3章 佐藤蒼紀
36/76

3-18 中身

「……あ~あ、利き水コンテストは落選か。水、いっぱい買っちゃったんだよなあ。勿体ねえ」

「遠藤くん、余ったやつどうする?」

「みんなに配るか。大隅おおすみ、ロッカーに水が入ってるから出してくれるか?」


 遠藤はジャージに着替えながらロッカー付近に座る大隅に頼んだ。大隅は立ち上がり、遠藤のロッカーを探す。


「ダンボールの中、あるだろ」

「ダンボール?」


 ロッカーを漁りながら、大隅が振り返る。

「この紙袋じゃなくて?」


「な、なにしてるのっ!?」


 叫んだのは愛華あいかだった。


 昼休憩を取っていた生徒たちは息を呑み、彼女と大隅を見比べている。大隅は紙袋からペットボトルを取り出していた。


 中には透明な水が入っている。

 ラベルは貼られていない。


「え? あっ、これ愛華ちゃんの……?」


 怒鳴られた大隅は、紙袋の中におどおどとペットボトルを戻す。


「そ、そうだよ。も~、スミーくんったら間違えないでよ」


 愛華は場を和ませようと、渾身こんしんの作り笑いを浮かべている。顔は真っ赤だった。


「ご、ごめんね?」

「ううん、邪魔だし、片付けようと思ってたんだ。寮まで置いてこよーっと」


 彼女はぎこちなく笑ったまま、ひったくるようにスミーこと大隅から紙袋を受け取った。


「ちょっと行ってくるね!」


 そう言い残し、あわただしく教室を出ていく。


「おいおい大隅、女子のロッカー漁るのはダメでしょうよ!」

「ペットボトルがたくさん入ってたからこれかと思って……」


 遠藤にいじられて、大隅も顔を真っ赤に染めていた。


「……愛華、どうしたんだろーね」

 女子の一人が声を潜めた。

「ね、今日ちょっと様子おかしくない?」

「たまーに重そうな紙袋持ってるなーとは思ってたけど、あれって水だったんだ」

「なにに使うんだろ?」

「美容?」


 取り残された女子たちは不思議そうに首を傾げるが、それ以上気に留めることもなく世間話を始めた。


 愛華が初めてバイトへ行くと言っていた土曜の朝のことを思い出す。

 重そうなダンボールを運んでいた。あの中身もやはり水だったのだろうか。利き水コンテストのために用意したというわけでもなさそうだ。


 では大量のあの水を、一体なにに使ったのだろう。


「なにかあったの?」

「う、後ろから急に声を掛けるな」


 ハンカチを片手に、野沢はいつの間にか教室へ戻ってきていた。彼女が不在の間に起きた出来事を話す。


「……愛華が持っていた紙袋の中身って、水だったの?」

「そうだ。ペットボトル入りの。野沢は教室にいなくてよかったな。トイレにでも行ってたのか?」


 彼女はもう午後の授業まで姿をくらますつもりなのだと思っていた。あと少し早く戻って来てペットボトルを目にしていたらまた具合が悪くなっていただろう。


「佐藤くんって、デリカシーが無いのね」


 ハンカチをしまうと、野沢はまた教室を出ていこうとする。


「どこへ行くんだ?」

「愛華を探しに。……私、彼女にお礼を言うべきでしょう?」

「まあ、そうだよな」


 利き水の話自体は流れたとはいえ、彼女は野沢が文化祭に参加できるようにみんなに前で頭を下げたのだ。


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