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フタシカなまま、ぼくたちは  作者: ばやし せいず
第3章 佐藤蒼紀
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3-6 心理学?

 次の日、とうとう二回目の小テストが行われた。分散学習の成果が試されるテストだ。

 愛華あいかから答案を受け取り、手に汗をかきつつ自分の点数を確認する。


「……!」


 点数を目にし、俺は思わず刮目かつもくした。



 放課後の校舎裏へ向かう。

 待ち合わせをしているのだ。人気の無い場所で待ち合わせだなんて、ひと昔前の漫画のようだ。


 しかし待ち構えているのは愛の告白でも決闘でもない。日当たりが悪く、じめじめしたこの場所で俺が待っていたのは、学習アドバイザーの野沢(こころ)だった。


「二回目の小テストの結果は、なんと……!」


 今日終えたばかりの小テストの答案をふところから取り出す。


「十七点。前回と同じね」


 ベンチに座る野沢は「十七」というぱっとしない数字を興味深そうに眺める。


「ほらな? やっぱり凡人には効果が無いんだよ」


 なるべく明るく笑い飛ばす。照れ隠しであり、彼女への気遣いでもあった。

 勉強法を変えたというのに前回と何も変わっていない。実験に付き合わされた立場とはいえ結果がふがいなく、なんだか申し訳なかった。


「効果が無い? 大いにあったわよ。毎日勉強しても間隔を空けても同じ点数になるのだったら後者の方がいいじゃない。浮いた時間は他の勉強に充てられたでしょう?」

「……」

 言われてみれば、確かにそうだ。

「じゃあ、地味に効果があったってことか?」

「英単語の勉強を毎日三十分していたと仮定すると、分散学習で浮いた時間は三十分かける三日分で合計九十分よ」


 一週間で一時間半もの時間の節約ができたと考えれば、確かに有意義な勉強法であるのかもしれない。


 野沢のような優秀な人間はこうして時間の使い方を考えているのか。

 素直に尊敬する。


「分散学習と事前テストだっけ。よく思いついたな。頭がいいやつは色々工夫しているんだな」


 俺の言葉に、彼女はきょとんとこちらを見返す。


「思いつくって?」

「野沢が編み出した方法じゃないのか?」

「そんなわけないじゃない。事前テストも分散学習も、心理学を基にしているのよ」


 心理学?


「うわ、なんだ。胡散うさんくさ!」


 心理学と聞いて、彼女を尊敬する気持ちがしゅるしゅるとえていった。


「心理学ってあれだろ? 『あなたはとてものどかわいています。この四種類のジュースのうち飲みたいものはどれですか? 直感で選んでください』っていう……」


 例えば、回答の選択肢がオレンジ、ピーチ、メロン、アップルの四種類だったとする。

 オレンジを選ぶと、「この心理テストでは何ジュースを選んだかによって好きな人に対するあなたの態度がわかります。オレンジを選んだあなたはとても積極的な人です!」……なんて言われるわけだ。


 この遊びは小学生のときに学校内で大ブームを起こした。選んだ答えの内容によっては揶揄やゆされることもあり、そのうち禁止となってしまった。


「それは心理学ではなくて、心理テストよ。当てずっぽうの占いみたいなものね。私もああいう根拠の無いものは胡散臭いと思うし、嫌い。あれは心理学という学問とは全く別物よ」

「えっ、違うのか?」

「心理学は、実験や観察や調査で集めた客観的なデータを扱うの。だから根拠があるのよ。占いやおまじないとは違うわ」


 全て鵜呑うのみにしてはいけないと思うけどね、と付け足す。

 へえ、と目を丸くした。実験や観察なんて、まるで理科の授業ようだ。


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