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1-1 頭がよくなる水
第1章 「佐藤蒼紀」
「頭がよくなる水なんて無い」。
彼女は言った。
はっきりと。
*
「それでは佐藤蒼紀さん。本校への志望理由をお答えください」
面接官たちを前にして、「実家を離れたいからです!」と正直に言えるはずがない。
だから俺は「昇山高校は全寮制で、思う存分に勉学に打ち込めるから」「自習室が完備されているから」などと、善良な受験生ぶってそう答えておいた。
「登校していない間、ご自宅ではどのように過ごしていましたか?」という質問にはつかえてしまったけれど、結果は見事合格。
学科試験は合計430点で、寮の入所費が免除となった。
一位にこそなれなかったけれど、バカではないということが証明された。
少なくとも俺は、そう捉えている。