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千代五星異聞奇譚 白光の焔  作者: トヨタ理
序章
14/50

忍び寄る影

 朝焼けに染まる白狐沼——そこに十数人程の人集りができていた。


 白狐沼から白い煙が上がっている。


 周辺住民からの知らせにより初期消火にあたろうとした地元の消防団や青年団、騒ぎを聞きつけた野次馬たちが集まっていた。


 しかし消防団が到着した頃にはすでに火の元らしき地点は鎮火され、彼岸花畑の一部が黒焦げになった以外被害らしい被害も見当たらず、今は消防団が中心となり沼周辺の見回りが行われている最中であった。


 そんな、後始末に追われる人群れの中、彼岸花畑の中にでこぼこな二つの黒い影があった。


 一人は、つばの大きいハデな帽子を被る小柄な娘。

 隣のもう一人は、怪しげな外套のフードを被った大柄の男。


 法被を着た地元の消防団達の群れの中で、黒衣を装う二人組は明らかにこの場から浮いている異質な存在だろう。しかし、彼らは誰もその黒い人影に目を留めない。


 否、()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


「あちゃー。ボクの大傑作、やーっぱハデに燃やされちゃってるなぁ。見た目はケッコーイケてたのに。まーた作り直しメンドー」


 気怠そうに娘が言うと、男がすかさず「ぎの出来損ないが大傑作か?」と厳しく言った。


「出たでた! カン違いシロウト意見! ボクの造形美が分かんないかなぁ!」


醜美しゅうびの話などしておらん。我々の狙いは神獣の魂と心臓。目的を果たさねばすべて出来損ないだ」


「わぁ、引くほどストイックぅ。だーってあんなの反則じゃーん。よわよわ神獣ちゃんが近くにいるって言うからボクの作品を放ったげたのに、あんな一瞬でボンッとかマジ酷すぎー」


「弱っていたとは言え、相手は計り知れない神力を持った神獣九尾白狐。貴様はいつも相手の力を見くびりすぎる」


「わ! オッサンの説教うっざぁ! だって九尾白狐ってチョー昔に死んだんじゃないのー? そんなん無理ゲーじゃんね」


「其れぐらい臨機応変に対応できんのか」


「はぁーっ!! ナニソレきっも! キミだって何もできなかったクセに! ボクの作品にどーこー言える立場かなぁ?」


 頬を膨らませる娘に男は答えなかった。フードからわずかに覗く傷のついた口元を固く結び、沈黙を貫く男に「シカトとかウケるー」と口を尖らせた。


「ま、もぉーいいや。ボクは目的とか役目とかどーだっていいもんねー。愉しけりゃなんだっていいし」


 おもむろに娘がしゃがみこむ。


 焼かれて黒焦げてしまった仲間達の中で、ただ一輪咲いている白い彼岸花。


 生き生きと白く咲き誇っていた花を娘が摘み取った途端、まるで早回しのように急速に枯れ果て——最期には生命力を全て搾り取られたかの如くおもく頭を垂れた。


「ボク、退屈って大っ嫌いなんだよねー。だから、もっともーっと愉しませてよね。お狐ちゃん」


 一筋のつむじ風が白狐沼に吹くと、もう黒い人影はどこにもいなかった。

 ここまで百光の焔をお読みいただき誠にありがとうございます。

 【序章】は以上で終了となります。


 この章の続きにあたる【第一章】の公開は三月下旬を予定しておりますので、今しばらくお待ちいただければ幸いです。

 また、今後の詳細な更新スケジュール等は、小説家になろうの【活動報告】や作者のX(旧ツイッター)にてお知らせしておりますので、併せてご確認いただければと存じます。


 引き続き、彼らの鮮烈な物語をお楽しみください!

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